作家の笹子は22年ぶりにJ保町を訪れた。この街にはかつて勤めていた出版社がある。当時のことを小説に書くための取材だった。──大学卒業後の1985年、小笹一夫は漫画編集者として出版社に入社。数年後、女性の格好をするようになり、「笹子」と呼ばれるも、会社からは解雇を言い渡されてしまう。漫画を愛する芥川賞作家の誕生前夜と今を描く、自伝的小説の冒頭を特別公開!