「下郎、待て!」。来栖伊兵衛はうしろから馬を煽り、泥を浴びせた無礼な乙女に平手を二発見舞った。だが、乙女はただの荒くれ娘ではなかった--なんと城主が溺愛する五女、万姫だったのである。薙刀と小太刀にすぐれ、男勝りの気性と目も覚めるような美貌で鳴らす万姫は屈辱に震え、伊兵衛に”戦い”を挑んでくる。万姫の攻撃に翻弄される伊兵衛。しかしある事件を機に二人の関係は一変する!! 周五郎流『じゃじゃ馬ならし』ともいうべき痛快ロマンの表題作を含む傑作短篇集。