韓国で20年以上読み継がれ、35万部を突破したロングセラー小説『ユジンとユジン』。国際アンデルセン賞最終候補作家・イ・グミによる代表作が、このたび待望の日本語版として刊行されました。
物語の主人公は、同じ名前を持つ二人の少女「ユジン」。幼い頃、ある事件の被害に遭ったふたりは、中学2年生の春、再び同じ教室で出会います。しかし、一人は当時の出来事を鮮明に覚え、もう一人はその記憶を失っていました。
作品が描くのは、事件そのものではなく、傷を抱えながら生きること、誰かに受け止めてもらうこと、そして「自分の人生」をもう一度取り戻していくまでの時間です。
発売を前に全国の書店員さんから熱量の高い感想が数多く寄せられました。なぜ、この物語はこれほどまでに人の心を動かすのか。
書店員の皆さんから寄せられた声を通して、作品の魅力をご紹介します。
これは誰かの物語ではなく、私たち自身の物語だった
韓国書籍専門のブックカフェ「CHEKCCORI」のキム・ジヨンさんは、高校3年生の頃に初めてこの作品を読まれたといいます。
「心の拠り所を見失い、先の見えない日々を漂っていたときに手に取った一冊の本が『ユジンとユジン』だった。目を背けたくなる出来事から逃げることなく、そのなかで傷つき、悩み、それでも生きようとする人々の声に耳を澄ませる。そのまなざしに触れたとき、初めて文学の持つ力を実感した。当時の私にとって、この作品は小さな灯りのような存在だった」と振り返ります。さらに約20年を経て読み返しても、「人と社会に向けた問いは少しも古びていない」と語ります。
紀伊國屋書店アリオ亀有店の平野千恵子さんは、二人のユジンに語りかけるようにこう綴っています。
「あなたのせいじゃない、それは間違いのない真実。……あなたの代わりに怒ってくれる家族がいること、黙って隣にいてくれる友達がいることをどうか祈らずにはいられない。それだけが、ほんの短い瞬間でもきっと希望になる」
印象的なのは、多くの書店員さんが「性被害を描いた作品」としてではなく、「自分自身の人生に重ねて読んだ作品」として感想を寄せていたことです。
消えない傷とともに生きるすべての人へ届ける静かな希望
『ユジンとユジン』は韓国ではヤングアダルト小説として刊行されました。しかし、日本の書店員さんから多く聞かれたのは、「子どもだけではなく、大人にこそ読んでほしい」という声でした。
この作品が届けているのは、「傷は忘れられる」という慰めではなく、傷は消えなくても誰かに受け止められることで、人は少しずつ前を向くことができるという、静かな希望です。
Book Yard.&COMOの川本梓さんは、
「親として、幼い我が子が負った傷をどう受け留め、どう支えていくのか。答えのない問いが頭の中にまだ残っています」
と語ります。
ジュンク堂書店イオンモール旭川駅前店の松村智子さんも、
「傷を負った人に寄り添い支えることについて深く考えさせられました。ユジンたちと同年代の子どもたちにも、親世代の大人たちにもぜひ読んでほしい作品です」
とコメントを寄せています。
さらにジュンク堂書店名古屋店の長尾香依子さんは、
「子どもを取り巻く状況は残念ながらあまり変わっていないように感じる。でも親として、大人として、何が一番大切なのかを具体的に教えられた気がしました。……日本でもたくさんの人に届きますように。きっとあなたの傷に寄り添ってくれるはず」
と20年以上読み継がれてきた意味をこう受け止めました。
作中では、二人の少女だけでなく、それぞれの親もまた葛藤します。子どもを守りたいという思いは同じなのに、選んだ道は違う。だからこそ、この作品は「親と子の物語」としても深く胸に残ります。
「あなたは悪くない」という言葉が、世代を超えて届く理由
本作のなかで何度も読者の心に残っているのが、「あなたは悪くない」というメッセージです。傷を抱えたまま大人になった人。かつて子どもだった自分を思い出した人。親として子どもを守りたいと願う人。読者それぞれが、自分自身の立場から物語を受け取っています。
「『あなたなら、大丈夫』という温かな想いが胸に残る。心に灯る優しい光のような作品」
という紀伊國屋書店福岡本店・宗岡敦子さんの言葉は、この作品を象徴しています。
本作を担当する営業の30代女性も、この作品に特別な思いを寄せています。
「“心にできた傷”は癒えることはない。嫌な出来事はふとしたときに思い出して、消えてくれない。ただ、寄り添ってくれる存在があることで救われることはある、と思っています。
この物語は「寄り添ってもらったこと」を思い出し、「寄り添うこと」「向き合うこと」について考えさせるきっかけを与えてくれました。韓国同様、日本でも長く愛される作品になるように、時間をかけて学生や教師に届けていきたいです。あとは、“親子関係で距離感がうまれてしまっている”と感じる方にも読んでほしいです。母と娘、それぞれの隠れた心情が打ち明けられたときに、“親は子と共に生きている”ということを思い知らされたからです。傷として残ってしまう経験に対して、この物語が自分の心を守り続けるような、支えになるような、そんな1冊になりますように。ユジンたちに温かな未来が待っていますように」
最後に、本作の担当編集者は作品の魅力をこう語ります。
「『ユジンとユジン』は心の傷とともにどのように生きていくかを丁寧に描いた物語です。
この作品は、傷とは「忘れたほうがいい」とか「乗り越えられる」とか、誰かにジャッジされるべきものではなく、その痛みすらも"あなただけのもの"なのだということを教えてくれます。
2004年に14歳だった2人のユジン。アイドルに夢中になったり、親に反抗したり、恋の詩を書いたり、ダンスをしたり……わたしはユジンたちの様々な感情に触れて14歳の自分と出会い直すことができました。時代や国を超えて、「わたしの物語」として読んでいただける作品です。韓国で世代を超えて愛される『ユジンとユジン』を日本でもたくさんのひとに届けたいです」
『ユジンとユジン』は、きっと読む人それぞれにとって、「自分の物語」として心に残る一冊になるはずです。