鬼と人の170年を描いた和風ファンタジー巨編「鬼人幻燈抄」シリーズが、2025年、中国の文学賞で「最も人気のある外国作家」部門賞に値する第36回「銀河賞 最受歓迎外国作家賞」を受賞しました。
江戸から平成にかけて、途方もない時間を旅する鬼人を描いた人気シリーズの最新文庫第11巻『花街夢灯籠』は、時代に取り残された“花街の姿”を描く昭和編。シリーズも佳境に入ってきた今からでも遅くない、本作の読みどころを編集担当者からのメッセージでお伝えします。
出会いと別れの季節に読みたいファンタジー
少しずつ寒さが和らいできたと思ったら、もうすっかり卒業シーズン。別れを意識するこの時期にぴったりでおすすめしたい作品が、「鬼人幻燈抄」シリーズです。
2025年にアニメ化され話題になった全14巻の和風ファンタジー小説シリーズが読者を虜にし続けてきたのは、数多くの印象に残る別れと、その後の再会の喜びを描き切っていることにあるかもしれません。
本作は、1000年の時を生きる鬼になってしまった主人公・甚夜の人生をたどっていく物語です。
時は江戸後期。産鉄民の村・葛野で育った甚夜は、村に起こった悲劇がきっかけで鬼となります。そして、復讐心だけを胸に170年後の世に現れると予言された鬼神を倒すため、遥か未来を目指し始めます。
江戸から平成までの旅路の中で、甚夜は数多くの別れを経験していきます。前向きな別れもあれば、大きく未練を残す別離も。また、別れということで切っても切れないのが、死という永遠の別れ。人生に満足するように病死した人、友のために命を賭して戦い散った人、中には甚夜自身が斬った人……。
そもそもこの物語の始まり自体が、甚夜が最愛の人とお互いを尊重するがゆえに別れを選んだことから始まっているのでした。
別れは切ない──ただ、切ないという感情自体は決して悪くはないと思えるのは、なぜでしょうか? それはおそらく、別れのあとの未来にある再会や、新しい出会いを想像しているからではないでしょうか。本作でも、多くの出会い、特に再会が描かれます。再会は人に限らず、遠い昔の友人が残した手紙や、約束、遺言……。後の世でそれらを見つけるたびに、甚夜は喜び、感動の涙を流すのです。
卒業式の日に、切ない思いで寄せ書きをしたり、タイムカプセルを埋めたりした方も少なくないと思います。いつかそれらと再会する未来が楽しみですね。そして、4月になれば新しい仲間との出会いも待っています。
出会いと別れのこの季節に、ぜひ、読んでほしいシリーズです。