警察小説は、いまやミステリーの一大ジャンル。だが、これほどまでに愛される主人公はいただろうか。かしこくて、かわいいゴールデン・レトリバーが事件を解決! 犬が主役の警察小説、待望の第二弾がついに発売。今作でもピーボの大活躍から目が離せません。
「小説推理」2026年3月号に掲載された書評家・細谷正充さんのレビューで『やっぱり犬は知っている』の読みどころをご紹介します。

『やっぱり犬は知っている』大倉崇裕 /細谷正充 [評]
ファシリティドッグのピーボとハンドラー笠門が事件を追う。待望のシリーズ第2弾の登場!
2024年に刊行された大倉崇裕の『犬は知っている』を読んだとき、一冊で終わりにするには、もったいない設定だと思った。なにしろ物語の主役が、ゴールデン・レトリバーのピーボと、そのハンドラーである笠門達也巡査部長なのだ。ちなみにピーボは、患者の恐怖や苦痛などを和らげるため、警察病院に常勤するファシリティドッグである。
しかしピーボには裏の任務があった。入院している余命僅かな囚人患者の心を開かせ、事件の秘密を笠門が聞き出せるようにしていたのである。ファシリティドッグという存在を、この作品で初めて知り、面白い存在に目を付けたものだと感心。もっと読みたい気持ちになった。だから、ピーボと笠門が再登場した、シリーズ第2弾の刊行が嬉しい。全4話が収録されているが、どれも優れた内容だ。
第一話は、心不全で末期の囚人患者がピーボに漏らした、断片的な言葉を笠門が調べるうちに、過去の殺人事件が浮上してくる。途中で恐るべき犯人が明らかになり、倒叙ミステリーのような笠門と犯人の対話による探り合いがあるのが楽しい。
なんて思っていたら、さらに物語は予想外の方向に転がっていく。ピーボの態度が事件解決の糸口になったり、お馴染みの脇役を絡めたりと、シリーズ物としての魅力も堪能できる。冒頭を飾るに相応しい秀作だ。
以後、第二話と第三話も、囚人患者の漏らした言葉から、笠門が過去の事件を掘り起こしていく。そして最終話は、いままでとは違うパターンで、笠門が殺人事件を追うことになる。
なるほど、同じパターンが続いて読者が飽きることを嫌い、目先を変えてきたかと考えたら、終盤でパターンの変化自体が作者の企みであることが判明。これにはやられた。もちろんピーボも活躍。面白いミステリーを探している人、作者のファン、そして愛犬家のみならず誰もが満足できるシリーズだ。できればこれからも、書き続けてほしいものである。