静岡県内の書店員・図書館職員がその年に最も読んでもらいたい作品を選ぶ「静岡書店大賞」の第13回贈賞式が12月2日(火)ホテルグランヒルズ静岡にて行われ、実石沙枝子さんの『扇谷家の不思議な家じまい』が【小説部門】大賞を受賞した。同著者は『踊れ、かっぽれ』(祥伝社文庫)で【映像化したい文庫部門】も受賞し、賞創設以来、初のW受賞となった。

 

扇谷家の不思議な家じまい
第13回静岡書店大賞を受賞した『扇谷家の不思議な家じまい』

 

 実石さんは「箱庭のような地方都市に根を張る不思議な一族の、家じまいへと向かう約90年を書いた作品でした。わたし自身、生まれも育ちも地方都市・静岡です。そんな地元で、本を愛する本のプロからこうして賞に選んでいただけたこと、とても嬉しいです。刊行の際に訪問した書店のみなさんに、応援の言葉をたくさんかけていただきました。SNSでも、店頭にたくさん本を並べていただいている写真を見ました。あのとき抱いた嬉しさとやる気を忘れずに、これからも一冊一冊がんばっていきます」と喜びを語った。

 

『扇谷家の不思議な家じまい』は、女性だけに超能力が発現する一族・扇谷家で、予知能力者のおばあさまが自らの死について記した予言帳が見つかったことを端緒に展開される、様々な家族の在り方や絆を描いたエンターテインメント作品。屋敷の庭の桜の木の下に埋まっていると言われる死体の謎や、超能力に人生を左右される各世代の葛藤など、1冊の中で多様なテーマが描かれている点も、多くの書店員・図書館職員から高く評価された。

 

 静岡県内の書店と図書館では、受賞を記念した帯や特製POPなどを使用した展開が始まっている。

 

あらすじ
地方都市・天島市で造船業を営んできた大家である扇谷家。ある日、予言の能力を駆使して一族を繁栄させたおばあさまのノート見つかった。ノートによると、どうやらおばあさまは100歳となる今年逝去するらしい。一族が集まり、家じまいをすることになるが、本家の娘・立夏には気になることがあった。それは認知症になって以来、おばあさまが繰り返す「桜の木の下に死体を埋めた」という台詞。「言葉なき者の声を聞く超能力」を持つ立夏だけは、それが事実だと知っているのだった……。