冷静なツッコミや自然体のコメントが愛され、家電やガンダム、ゴルフなど好きを深堀するスタイルがバラエティで高く評価される芸人・土田晃之さん。

 このたび、自らの幼少期から青春までの様々なカルチャーを振り返る『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』を刊行した。昭和の「クレイジー」な力がいかに今の土田晃之を作り上げたのか──。昭和47年生まれならではの話をうかがった。

 

取材・文=田部井徹 撮影=有坂政晴

 

 

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過去を振り返りたくはないんですけど、今は何もできない時代なので、それに比べて楽しかったよね、っていうのはついつい言いたくなっちゃう。

 

──土田さんは1972年(昭和47年)生まれ。子ども時代1980年代のカルチャーを全身で浴びる世代ですが、実はその前の世代……例えば、手塚治虫とか前の時代のものも触れながら、80年代の後半にはジブリとか次の時代につながるものにも触れ、ちょうど時代が変化する面白いタイミングだったのかな、と。

 

土田:今はサブスクみたいなもので昔の作品が見られますけど、僕らのときはとにかく再放送。やたら再放送やってましたからね。初代の『ウルトラマン』も『仮面ライダー』の1号も『あしたのジョー」も見てる。そういう意味では恵まれてる世代かなと思いますね。

 

──この『昭和カルチャー回顧録』では、同世代のおじさんに向けて、とおっしゃっていましたが、こんなふうに楽しんで欲しいというのはありますか?

 

土田:いや、期待しないで読んでください(笑)。昭和を語ってるつもりもなくて、僕が子どものときに「これ見てたよ」っていう話をしてるだけなんで。同じクラスの友達が、話してるぐらいの感覚なのかなと思ってるので、「これあったよね」って、「こんなんだったなぁ」と、思い出してもらえたらいいかな、というぐらいの感じです。

 

──読んでいると思い出すことがたくさんありました。

 

土田:意外と忘れてることもありますからね。だから別に若いやつに読んでほしいとは1ミリも思ってないですし、読む必要はない、読まないでくださいと思ってるんで。これ読んでも昭和は学べないですから(笑)。

 

──それにしても面白い世代だったな、というのを感じます。今の時代へのメッセージとして何かあればと思うのですが……

 

土田:いやぁないっすねぇ(笑)。

 

──だと思いました(笑)。でも当時の良さと今の良さ、はいろいろと考えました。

 

土田:今の時代のほうがいいなと思うところはいっぱいあるんですよね。何でも調べられたり情報がいっぱいあったり。あと防犯的なこと。ネット社会はいろいろ大変だったりするけれど、でも街でカツアゲされてる人なんかいないじゃないですか(笑)。防犯カメラも増えたり、意識も変わったり。そういうのはマジでいいことだと思うし、今振り返れば、昭和の時代はどうかしてますよね(笑)。プロ野球名鑑とかに、選手の自宅とかが書いてあったりするじゃないすか。ファンが直接手紙を送れるように、みたいな感じで。個人情報ダダ洩れですよね(笑)。昭和の大きな事件があると、家族へのインタビューとかも平気でガンガンするんすよね。あの辺、とんでもない。どうかしてるし、ありえない。ただ、その分、バラエティもクレイジーだったし、だから面白かったんだなとも思うんですよね。その辺は今回書いた部分かなと思います。

 

──突破力というか、「やっちゃえ」的な感じがバラエティにあふれてますよね。

 

土田:「やっちゃえ」みたいなことでいえば、(ビート)たけしさんの『お笑いウルトラクイズ』とかまさにそうですよね。今って、PTAが「あの番組見るな」みたいなこと言う番組って少ないじゃないですか。当時やたらありましたからね(笑)。親が「こんなん見てんじゃない」っていう番組がいくつもあって、それがめちゃくちゃ面白かった。

本当はそんなに過去を振り返りたくはないんですけど、今は何もできないがんじがらめの時代なので、それに比べて楽しかったよね、っていうのは、ついつい言いたくなっちゃう。そういうことを書いた本ですね。