五年前

 

 三台の大型ディスプレイや無数の機材。全体的に殺風景な会議室。水無瀬み な せりよう捜査隊主任は、説明を受けるよりも前に、ノート型パソコンの画面を見せられた。

 水無瀬は画面に身を乗り出した。儚いオレンジのダウンライトが目に入った。静寂に包まれた部屋の中にささやかな男女のあえぎ声が響く。

 最初に焦点があっていないぼやけた映像。その後、コントラストの強い動画が流れ始めた。全身に汗を滲ませた全裸の若い男が見える。荒い息を吐き出しながらベッドの中でケラケラと笑っている。だが顔は見えない。

 その隣で一糸まとわぬ姿の女が、うっとりとした表情で男の胸に顔をもたせかけている。さっきまで何度も押し寄せていた歓喜の余韻にまみれたかのようだ。彼女もまた微妙に顔貌をカメラの前に晒さない。

 水無瀬は薬物の濫用における残酷な結果を熟知している。アルカロイド系物質は、一回の摂取だけでも肉体的効果が発現するまでの時間は恐ろしく短く、ほんの数分で強烈な陶酔感が怒濤のように全身を襲うのだ。

 女が手を伸ばすと男はその手を強引に引き寄せた。しわだらけの白いシーツの上に女を組み敷いた男は、獣の叫び声を上げ、赤みを帯びた柔肌に再び襲いかかった。

 脳内ホルモンのノルアドレナリンとドーパミンの下僕げ ぼくに成り下がっただけの男は、女に重大な医学的問題が発生したことに気づくまで時間がかかった。

 女の異変にようやく気づいた男は女を抱きかかえ緩慢な言葉で呼びかけた。

 だが女は、鼻腔を大きく広げ、カッと見開いた二つの眼球は異様なほど血走り、唇の端からは泡状の唾液がダラダラと零れ落ちている。

「Wh, What's wrong……?(ど、どうしたんだ……?)」

 男の言葉に女は反応しなかった。

 男は、だらんとする女の身体を緩慢に揺さぶった。だが、されるがままに女の身体は揺れるだけだった──。

 

 

「昨日、レターパックで届いた」

 水無瀬の直属の上司である岡北おか きた捜査隊長がつづける。

「宛名は、国際組織犯罪対策基地ウチの英語名の頭文字をとった略語『TOCSFトクスフ』。住所番地まで正しい。差出人はない」

 薬物密輸等の国際的な組織犯罪を摘発する海上保安庁の国際組織犯罪対策基地コクタイキチは、トップの「基地長」のもとに、国際組織犯罪捜査のベテラン中のベテランである「業務調整官ぎよう む ちよう せい かん」が存在し、大きな二つの部隊──「捜査隊」と「情報班」とを統率している。だが、高度に隠密化、武装化もされている組織犯罪と戦うため、これら編成は秘密扱いであるだけでなく、所在地、編成、人数、氏名や技能のすべても極秘だ。活動地域は、海上保安庁業務の基本組織である管区には縛られず、日本全国のみならず世界各地に及んでいる。

 映像を消した岡北がパソコンから抜いたUSBメモリーを掲げて言った。

 水無瀬はより強い違和感を覚えた。コクタイキチの所在地は極秘となっているからだ。しかも英語名の頭文字をとった略語「トクスフ」は、海外カウンター・パートである各国の法執行機関の最高幹部と手交する名刺にしか書かれていない。得体の知れない不気味さを感じる。

「二人の男女の人定は?」

 水無瀬が訊いた。

「試験センター(海上保安試験研究センター)が特定中だ」

「メッセージのたぐいは?」

 岡北は答えるかわりに頭を振った。

 水無瀬は構わずつづけた。

「目的について情報班は何か?」

「見当もつかないと──」

 しばらく考え込んでから水無瀬が口を開いた。

「隊長、今、私の頭の中にあるものは隊長と同じですね?」

「明日が着手日というタイミングのことだな」

 水無瀬の脳裡に不気味なドス黒い渦となって現れたのは、深遠なる闇が自分を凝視しているおぞましい、、、、、絵図だ。

「二年ですよ、二年」

 水無瀬が押し殺した声でそう言いながら、家族を含めたあらゆるものを犠牲にしてすべてを懸けてきた二年間に及ぶ捜査の日々を思い出すと、水無瀬らしくもなく感傷的になった。ゆえに、このタイミングで、くだらないことでも邪魔が入ることは我慢ならなかった。

「少しの邪魔でも排除したい。隊長、不測事態対処の人員を増やしてください」

「分かった、そうしよう」

 岡北が力強く頷いた。

 

 

 ここ三十年間、〈ジゼル〉という暗号名で呼ばれている男には揺るぎない自信があった。

 波濤を切り裂く船首にある投錨機に片足をかけ、鋼のような胸筋を張り出して屹立きつ りつする男はいつもの想像をした。波濤を砕く凄まじさは獣が醜い歯茎を剥き出しにして襲うがごときである──そんな自分の果てしない力を感じていた。深淵に沈む呪われた闇を抉り出すがごとく魂を断ち割り、すべてを無慈悲に引き裂くがごとく存在を否定しているように感じた。

〈ジゼル〉の名を最初に耳にした誰もが聞くのは、ロマンチックバレエの代表作〈ジゼル〉から命名したのか、ということだ。その都度、彼は大きく頷いた上でこう語った。現実とは決して救われない不条理なものであるがゆえ、私は破滅的な世界を選んだ。よって救われない悲恋劇「ジゼル」、その名こそ私の人生にとって最も相応しい──。

 今回のビジネス、、、、が成功に終わることになんの疑いもない。その確信はこの危険なビジネスの中で生き抜いてきた三十年間ずっと変わらない。すべてが上手くいったからだ。つまり各国の捜査当局に検挙されたことがこれまで一度としてないということである。それどころか疑われたことすらない。目まぐるしく所在地を変えてきたオフィスはもとより、その近隣でさえ、監視されている気配を感じたことが一度としてないのだ。

 捜査当局の監視網をすり抜けてきたという表現を彼は激しく忌避していた。もし捜査当局に検挙されれば、国によっては死刑の罰則を受ける。そんな世界でよく当局の目をかいくぐってこれたもんだ──と同業者、、、たちはよく口にする。だが〈ジゼル〉はその言葉に反応することはなかった。ただ黙ってにやついた。しかし頭の中でこう思った。そんなチンケな話じゃないぜ。尻尾を巻いて逃げたことは一度もない、捜査当局やお前たちより少しだけ頭を使ってきた、、、、、、ただそれだけさ──。

 英語を使う部下の男が緊張した声で伝えてきた。

 振り返った〈ジゼル〉は体を震わす男を満足そうに見つめた。〈ジゼル)は乗りの者たちを という恐怖で呪縛し統率していた。命令に対して一生懸命やったが失敗してしまう者たちを何ら咎めない。しかし意図的に手を抜いたり、嘘をつく者には容赦がなかった。そして何より、彼のやることを邪魔する奴こそ許さなかった。すでにフィリピンの捜査当局の捜査官でさえ、信頼できる者を使って暗殺させていた。

 その“信頼できる者”こそ〈ジゼル〉の身近な血縁だけで構成する“四天王”と呼ぶ四人の最側近たちだ。特にそのうちの一人、〈ジゼル〉の妻の弟であり、〈ロドリゲス〉という男は、最も凶暴であるが〈ジゼル〉が最も信頼を置き、特殊な身辺警護を任せている。虎の牙から作った大きな真っ赤な指輪をしていることから〈燃えたぎる牙ブレイジングフアング〉とブラックマーケットで恐れられていることは〈ジゼル〉にとって頼もしい限りだった。

〈ジゼル〉は、それら“四天王”とその配下の者たちを使って、そういったデキの悪い奴ら、、、、、、、をまず甲板に集めさせた上で全裸にして晒す。そして二十年前、日本の岐阜県関市の刀鍛冶に大金を払って作らせた日本刀を握った〈ジゼル〉が片腕の肘から先を斬り落とす。刀匠とう しように直々に教えを請うた剣技けん ぎは失敗するはずもなく、ひと振りで見事に切断するのだ。

〈ジゼル〉は準備に取りかかった。その準備とは『瀬取り』という海上での薬物ブツの闇取引である。かつては二隻の船を並行して走らせ、クレーンによって受け渡しをしていた。だが各国の捜査当局の取締りが強化されたことで、よりリスクの少ないダンプ・アンド・ピックアップという方式が主流となった。その方式は、まず受け渡し側の「親船おや せん」が“ブツ”を梱包したパッケージを海に投下する。しばらく経ってからやってくる「子船こ せん」が海に漂うそれを回収する方法である。

 ひと言で言ってしまえば簡単そうに聞こえる。だが、実際は、複雑な最先端技術と極めて高い乗組員たちのスキルが求められることを〈ジゼル〉は当然、熟知している。

「親船」が広大な海洋上で指定された座標に正確に到達し、“ブツ”を海面に投下する際には、特殊なGPS装置など高精度測位システムを操る熟練した技能が不可欠である。天候が荒れた海域では船位を維持するダイナミックポジショニングシステムのような高度な技術がさらに必要となる。

 投下する“ブツ”は水圧耐性設計がなされたパッケージに収められ、「子船」が引き揚げるために必要な位置を衛星から受信と発信を行うGPSトレッカーの他、音響ビーコンとトランスポンダが取り付けられている。

 また、捜査当局の監視レーダー探知を避けるため、〈ジゼル〉が今乗っている漁船に偽装した船は、FRPや複合材といった非金属素材を多用する加工がなされるなど、レーダー反射を抑えるステルス設計が徹底して施されていた。

 さらに通常、船舶に義務付けられているAISなど自らの位置を発信する識別システムを意図的に停止させているのはもちろんだ。航行の安全性を損なう危険な行為であることは〈ジゼル〉の眼中になかった。

「十分後だ。投下ダンプする」〈ジゼル〉は船を回って部下たちに次々と同じ言葉を投げかけた。「最終チェックを行え」

 

 

 船橋のほぼ中央に設置されている遠隔監視装置の画面を、水無瀬諒は二人の部下とともに食い入るように見つめている。すでに八時間かけて監視している被疑船ひ ぎ せんまで十マイル。遠隔監視装置の赤外線が届き、かつ対象船から双眼鏡を使っても見つからないギリギリの距離を海上保安庁の巡視船「いつくしま」はずっと維持して秘匿追尾していた。

 水無瀬は、「国際組織犯罪対策基地コクタイキチ」の捜査隊の第2チームに属する隊員で三十五歳。十三年前に京都府舞鶴きょう と ふ まい づるの海上保安学校を卒業。その後に配属された管区海上保安本部の頃より国際刑事部門(外国人による密輸・密航事件の捜査担当)で一貫して働き、前職は、南西諸島エリアを担任する第11管区海上保安本部の国際刑事課で薬物の密輸事案捜査を行うなど、ほとんど国際刑事捜査一本でやってきた。

「正直言って自分は親船にいるはずのジゼルもイッキにふんづかまえたい気分です。もちろんそれが不可能であることは知ってます。でも、実は、本気です」

 普段はスーツ姿だが今日はダークブルーの活動服を着込んでいる水無瀬の隣から能勢の せがそう言った。その時の彼の瞳に秘められた殺気を感じた水無瀬は、こいつなら今にもやりかねない、と真剣に思った。コクタイキチの若い奴らのほとんどが、能勢がこれまで中国のマフィアを何人も射殺していると本気で信じている。

 彼は海上保安学校の後輩にあたる三十一歳。卒業配置の保安本部の時代から水無瀬の足跡を追うようにずっと国際刑事捜査部門を歩んできた。

「オレだってそうさ。目の前にいるんだ。クソッ!」

 水無瀬は顔を歪めながらつづけた。

「しかし野郎も考えてる。ここは排他的経済水域EZそと。『密輸』では検挙できない。『所持』にしても日本船籍の船が絡む場合のみ。まして身柄なんてとれやしねえ」

「なんて野郎だ」

 能勢が吐き捨てた。

「焦るな。『子船』はちゃんと港に入る。引き込んでしまえば勝負はつく」

「しかしです。少なくとも、受け取り側の『子船』は日本船籍なので『所持』なら検挙はできます──」

 能勢が言った。

「お前だってわかってるはずだ。今更バカな話をするな」

「分かってます」能勢がすぐに反応した。「『所持』なんて、たかだか数年、臭い飯を食うだけだ」

 水無瀬が吐き捨てるように言ったその言葉に、能勢は口を一文字に結んで唸った。

 今回の「瀬取り」の作戦を〈ジゼル〉が仕切ったとの情報はすでに確認していた。

 コクタイキチの〈ジゼル〉に関するファイルの中にあるのは「瀬取り」の親船に乗って薬物密輸を〈ジゼル〉が仕切り、その結果、日本に大量の薬物を送り込み、数万人以上の国民が廃人かそれに近い状態になったというのは事実である。だからこそ、コクタイキチにとって、国内で密売するような雑魚は相手にしない。コクタイキチが主なターゲットとする「瀬取り」による密輸は空港や郵便物で発見されるものとは量とケタが違う。「トン」というレベルにもなる。大量の薬物を密輸することによって万単位の国民を地獄に陥れるのを遮断することこそ任務である。更生施設と病院との間を彷徨う青年、覚醒剤シヤブ漬けにされてソープで働かされている少女、軽い気分から覚醒剤に手を出して夫も子供も失った挙げ句、ホステスとして働いたクラブで客を刺して刑務所に送られた元主婦など、悲惨な人生を送っている者は実に膨大だ。

 その諸悪の根源である〈ジゼル〉は何としてでも検挙したい存在だった。彼の関与が疑われる日本への薬物密輸の総重量は実に十トンにも及ぶのだ。その末端価格は六千億円になる。

「自分、いろいろ考えてみたんです」能勢がつづける。「日本に、いや、せめて日本近海まで連れてくる。そしてEEZの中に引き込んで『所持』で身柄をとる。そうすれば、インターポールの手配があるので、各国に次々と引渡し、三十年以上はシャバに出られません。国によっては死刑となる──」

「いい考えだ。しかし、肝心なのはどうやって連れてくるかだ」

 水無瀬はそう言って鼻で笑った。

「ディスインフォメーション作戦、つまり欺まん情報を、何らかの手段で〈ジゼル〉に届け、そして引き込む、それですね」

 コクタイキチで二番目に若い、二十七歳の名城めい じようが引き継いだ。

「その、何らかの手段ってなんなんだ? そこが一番問題だろ」

 水無瀬は頭を振った。

「ただな──」

 水無瀬が真剣な表情となった。

「来年、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナムと日本の法執行機関との間で『五ヶ国薬物密輸対処共同イニシアチブFDS』が締結される。つまり国際オペレーションができる。その時、何かができるかもしれない。日本で対応できるのはウチだけだ」

「来年か……」

 能勢が大きく息を吸い込んだ。

「楽しみです」

 名城が顔を輝かせた。

「ところで、ジゼルのことは自分なりに勉強したんですが──」名城が怪訝な貌で水無瀬を見つめた。「顔写真が一枚もないとはまったく驚きです」

「それほどの慎重さがあったからこそ、薬物密輸という死の淵を歩いてきたような奴が長きに亘って無傷である理由なんだろうよ」

 そう言って唇を曲げた水無瀬は、遠隔監視装置から離れ、船橋の真正面にあるブリッジウインドウの前に立った。そして伊豆半島沖の暗い海を見下ろしながら、一年前、国際組織犯罪対策基地長の壇野だん のの鞄持ちで北京の中国公安部(日本の警察庁にあたる)の禁毒局(薬物捜査部門)を訪れた時のことが脳裏に蘇った。

 禁毒局の次長は最初、明らかに居丈高い たけ だかな態度で相対した。しかも、壇野基地長が、〈ジゼル〉の名前を出して、国際連携によって〈ジゼル〉の摘発を推進する提案にも「我々の最優先は台湾からの密輸摘発だ。それを国是にしている」と木で鼻を括ったような言葉を返す始末だった。だが常に冷静だった壇野が、コクタイキチの情報班が独自に調べた〈ジゼル〉についてのドキュメントを披露し始めた途端、椅子から立ち上がって身を乗り出した。

 そして、急に丁寧な口調になってこう言った。

「貴国の提案はこちらも渇望するところであります。どうか、ここは、あらたな協定を作って〈ジゼル〉の検挙を国際協調として目指しましょう」

〈ジゼル〉は、二十年ほど前から、東アジアの複数国の捜査当局が血眼ち まなこになって追っていた存在だった。そして十年前、我が物顔で船を使った薬物の密輸をつづけている〈ジゼル〉に業を煮やしたフィリピンとベトナムの捜査当局はついに〈ジゼル〉が薬物犯罪を既遂き すいしたという証拠エビデンスを押さえて国内において指名手配。さらにICPO(国際刑事警察機構)に対して、ディフュージョン・インターポール(全加盟国一斉手配)によるレッド・ノーティス(身柄拘束要請)を行うというレベルにまで一気に発展させた。そして、日本とフィリピンが先頭に立ち、東アジア各国で、〈ジゼル〉検挙への国際連携を行って追い詰めようという気運が高まったのである。

 だがそれは上手くいかなかった。事実上、賄賂の提供を受けた政府高官が〈ジゼル〉を保護しているという噂があり、数カ国が協力することに難色を示したからだ。国際連携は頓挫することになったのだ。

「被疑船、“ブツ”の投下ダンプ確認! 時間、午前一時二十八分。録画継続中!」

 能勢が声を上げた。

 水無瀬は急いで遠隔監視装置の前に戻り赤外線で探知している被疑船を見つめた。その直後だった。白黒に映る被疑船の甲板からパッケージが海に投げられた。

「二投目、視認! さらに三投目、確認!」

 水無瀬は、二投目と三投目の投下がなされる白黒のライブ映像をまじまじと見つめた。そして、満足げにひとり大きく頷いた。後は、それほど時間を置かず、『子船』が出現する。そしてGPSトレッカーなどを頼りに漂流するパッケージを次々と回収してゆくだろう。しかしその段階でもこちらは手を出さない。距離をとったままひたすらステルスで追尾し、採証作業としての録画をつづけるのみである。水無瀬はその先の包囲網を脳裏に思い描いた。『子船』が「陸揚げ」する予定の海岸近くに潜んでいる静岡県警の警察官、関東信越厚生局麻薬取締部マトリ、さらに東京税関監視部の職員たち。総勢三十名だ。そして「陸揚げ」を行った直後は共同作戦、隠語で言うところの「突き上げ」が開始される。コクタイキチ、警察、税関の職員が数台の車に分乗し、「陸揚げ」された“ブツ”を秘匿追尾して最終目的地を掴む。つまり薬物密輸犯罪の“真の指揮官”を含む密輸に関与した者たちを一網打尽にするのだ。その時、“真の指揮官”の顔の前に、裁判官が発行した逮捕許可証を掲げるのは、わがコクタイキチの岡北捜査隊長である。最初に情報を取ってきた組織が“晴れ舞台”を飾れる暗黙のルールが密輸犯罪捜査には存在するのだ。

 

(つづく)