ある家族の歪な繋がりが、女性連続殺害事件の根源になっていた──。
パートナーが自閉スペクトラム症(ASD)など共感性の低い特性があるために、コミュニケーションや情緒的な関係を築くことが難しく、ストレスにより心身不調が出る「カサンドラ症候群」。本来大人が担うべき家族の世話や介護などを、日常的に背負わされている「ヤングケアラー」……。
櫛木理宇氏の最新作『骨と肉』は、そんな家族にまつわる現代の社会現象を絡めながら、連続事件の真相を追うミステリー作品です。
「犯人が身内かもしれない」と追い込まれる主人公の刑事と同じように、読者も何かが起こりそうな不穏な空気に緊張しながらページをめくることに……。発売前の原稿が読める会員サイト「Netgalley」にあつまった『骨と肉』の感想をご紹介します。
全国から絶賛のコメントが続々!
真犯人はまったく想定してなかった人物でした。つまり、ミスリードがすこぶる巧妙。だんだん人物の背景がわかってくると疑惑は少しずつ伏線回収されていく。それでいて、犯人像はまったく最後まで見えない。
(レビュアー)
「殺意の引き金は、いつだって報われぬ愛なのだ」
カサンドラ症候群、双子、ビンゴ理論、シリアルキラー、これだけ要素の多い作品なのに爽やかな読後感という稀有な作品。
(レビュアー)
櫛木理宇さんの作品は『死刑にいたる病』を読んだときトラウマ級な衝撃を受けたのについ新作を読んでしまう。その歪みは遺伝なのか、環境要因なのか? 家族とは一体何なのか? 負の連鎖は断ち切れるのか? 現代社会の問題点と向き合ううちに、歪んだ一族を通して事件の怖さだけでなく人間の心の奥底にある思いの怖さを味わった。
(レビュアー)
読み始めから、違和感が凄くてゾワゾワするのに読む事を止められませんでした。主人公の状況が少しずつ解明されるに従って、サラッと流していた家族の話に思い当たりその歪さや奥底のしれない不気味さも次々と湧き上がり、自分の中の何かが拒絶する感覚があるのに止められない!
(書店関係者)
シリアルマーダーである双子の弟の手記、バニッシングツイン。前世での片割れ、ヤングケアラー。更に共感力が無い者との関係に巻き込まれるカサンドラ症候群まで。そしてそこには、常に今回の連続殺人事件の犯人の姿がちらついている。休職中ながら犯人を探ろうとする武留が、その真っ只中で精神を病んでいく様子を読むのは苦行にも似ていた。すでにミステリの範疇を超えている。
(教育関係者)
受け継がれる家族の闇と、双子のシンクロニシティに特別な意味を見出し、依存しようとする者と忌避する者。遺伝なのか、環境なのか──人の心の形成にどちらが強く影響を与えるのか、ヤングケアラーなどの社会問題や心理学を用いて炙り出していく興味深い作品。
(書店関係者)
次第に精神を病んでいく主人公とともに、一族の闇に引きずり込まれる本作。時に依存し、時に忌み嫌いながらもその「繋がり」から逃れることができない家族の物語は、トラウマ必至のサスペンスミステリーか、それとも? ぜひお手に取って確かめてみてください。
【あらすじ】
臼原市で死体遺棄事件が起きた。女性の遺体は強姦の跡があり身体の一部は切り取られている。数日後、再び臼原署管轄内で女性の惨殺遺体が発見される。捜査本部の刑事・八島武瑠は約二十年前に東京の三鷹市で起きた連続女性死体遺棄事件との共通点に気づいた。今回同様、遺体はひどく損傷し、彼女たちの容姿も似通っていた。時を同じくして、捜査をすすめる武瑠に従弟の願示が急接近し、独自に調べて分かったという「真相」を話し始める。二十年前の事件の犯人は亡くなった双子の弟で、今回の事件はその模倣犯によるものだ──。今回も身内の犯行かもしれない。武瑠は次第に追い込まれていくが……。