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 世界20カ国以上で翻訳が進行中の『人生写真館の奇跡』の作者・柊サナカ氏が“遺品配送”をテーマに書いた「天国からの宅配便」シリーズ。最新刊となる『天国からの宅配便 時を越える約束』がいよいよ発売された。亡き人から届いた思いがけない贈り物の中身は、一体どんなものなのか? 四作収録された短編には、それぞれの受取人が様々な思いを背負い、それでも今生きている瞬間を大切にしようと一歩を踏み出す姿が描かれている。生きる希望を届ける本作を執筆した柊氏に、作品にこめた思いをうかがった。

 

死は何もかもが無になるのではなく、人の遺した思いは今を生きる誰かを助けたり、力づけたりする

 

──作品では様々な「死」を扱いますが、悲しみだけでなく優しさが詰まった読み心地で、読後はより良く生きようという前向きな気持ちが湧いてきます。柊さんがこのテーマを書く上で、意識している点などがあれば教えて下さい。

 

柊:絶望の煮しめみたいな話も読者としては好きです。でも、「天国からの宅配便」では、なんらかの救いがあるように書いています。「死」は何もかもが無になったのではなくて、その人の遺した思いは、今を生きる誰かを助けたり、力づけたりすることもあると信じています。

 

──『人生写真館の奇跡』は20カ国以上での海外翻訳がすでに決まり、「天国からの宅配便」シリーズにも熱烈な翻訳オファーをいただいています。海外で自分の作品が読まれることについて、どのように感じますか?

 

柊:純粋に嬉しいです。お国柄によって表紙やデザインが違ったりするのも面白いし、SNSなどに海外の読者のみなさんからメッセージが届いたり、タグをつけて紹介してくださったりも。折り紙が入った限定ボックスや、書店の朗読イベントのような、日本ではあまり見ない取り組みをしているところも見かけました。「天国からの宅配便」もいろいろな国で読まれたら嬉しいですね

 

──柊さんがもしも「天国宅配便」を依頼するとしたら、誰にどんなものを残したいかですか?

 

柊:家族に、「実物大・柊 製作キット」初回は左足首から、全12回、みたいなのを思いつきましたが、あまり感動的じゃないですね(笑)。

 

──今後描いてみたいもの、興味のあるテーマはなんですか?

 

柊:今、個人的な活動で、カメラを扱う技術者の方にインタビューをする試みをしています。人に歴史あり、と言いますが、人生のお話を聞くのはすごく面白いです。上の年代の人が話すことは、後の世代はまったく知らないので、驚くことばかり。雨の日はカメラのフラッシュを焚いたら感電するから困った、みたいな体験談を聞いたり……。人生の話を聞くことにすっかりはまっています。外へいろいろ出かけて、できるだけ人と会って話を聞きたいと思うようになりました。今後も、人間ドラマを書いていきたいです。

 

──これから本作を読まれる読者さんへ、読みどころや楽しんで頂きたいところなどを教えてください。

 

柊:どの話も、読者のみなさんの予想外の方向へ転がるようにと気を付けて作りました。例えば一話「パンドラのひみつ箱」。生き別れの姉の遺した箱の中には、何が入っているのか? お金でしょうか? 宝石? はたまた小判? なんだと思いますか?

 本作はミステリーじゃないのですが、構成はミステリーを意識して書いています。登場人物と一緒に、ぜひ箱を開けていただきたいです。シリーズものですが、どの巻からもまったく問題なく読んでいただけます。自信作ですので、ぜひみなさんに読んでいただきたいです。

 

──ありがとうございました。

 

【あらすじ】
依頼人の死後に届けものをするサービス「天国宅配便」の配達人・七星が贈る感動のシリーズ第3弾! 姉を許せないまま生き別れた女性に届いた小包み。高校生が通う大好きな食堂の営業最終日。子供の頃ファンレターを送った漫画家からの思いがけない返事。老人が美術展で知り合った少年と交わした“賭け”……。心温まる4編+エピローグを収録。