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『コーヒーが冷めないうちに』『本を守ろうする猫の話』『森崎書店の日々』など、海外展開で成功する日本の小説が増えている。近年ヨーロッパ諸国では日本の翻訳小説の人気がますます広がりを見せているが、そこにはどのような背景があるのだろうか。

『人生写真館の奇跡』が20カ国以上で翻訳された柊サナカの新作『天国からの宅配便』も国内での発売後、ドイツから熱烈な出版オファーがあった。

 海外へ日本小説を紹介する販売エージェントのエミリー・チュアン(EMILY BOOKS AGENCY)と、本作のドイツでの版元となった出版社「HOFFMANN UND CAMPE VERLAG GmbH」で働く編集者カトリン・アエのふたりに、海外市場における日本の小説の動向について話を聞いた。

 

スペイン版『人生写真館の奇跡』

 

死を避けるヨーロッパの文化の中で、日本小説の「最期」の描かれ方から学ぶことがある

 

──カトリン・アエさんはドイツの出版社で編集者をされていますが、なぜ日本の小説『天国からの宅配便』を翻訳出版しようと決めましたか?

カトリン・アエ(以下、カトリン):柊サナカさんの最初のドイツ語翻訳作品『人生写真館の奇跡』は、ドイツ語圏市場で大成功を収めました。私も読者も「人生は美しい、あなたは生きている今、その美しさを見る必要がある」という小説の素晴らしいメッセージに感動したのです。そのため、柊サナカさんによって新たに書かれた『天国からの宅配便』という、魅力的で心温まる小説があると知った時、私たちの出版社は喜んで出版を決めました。新作の『天国からの宅配便』は配達人の七星という好感が持てる登場人物を通して、様々な人生が描かれる作品です。本作も『人生写真館の奇跡』と同様に、読者へ賢明なメッセージを伝えてくれています。

 

──『天国からの宅配便』のテーマはドイツの読者も共感しますか?

 

カトリン:はい、間違いなく。この小説は、人生は「さよなら」に満ちていることを思い出させてくれるんです。そしてしばしば、私たちはその「さよなら」が最後のものであることを知ることができません。だからこの作品は、世界の誰もが最終的に抱くだろう疑問──「もしその人と会う最後の瞬間だと知っていたら、自分の発言や行動は変わっていたのだろうか?」という問いを提示していると思います。

 この小説は、「天国宅配便」という遺品配送サービスと、七星という配達人を通じて、たとえ伝える側が亡くなった後だとしても、誰かの心を救うメッセージを送るのに遅すぎることはないと示してくれています。私たちは誰かと互いの手を差し伸べ続けるべきだということを思い出させてくれる小説なのです。多くのドイツの読者が本作を読んで、互いへの関心や敬意を持って人生を過ごそうという意識を抱く姿を、私は見ています。

 

──日本の小説がドイツで読まれる際に、どのような文化的な違いを感じますか?

 

カトリン:柊サナカさんの小説のテーマはとても普遍的だと思います。また日本文化について多くのことを教えてくれるので、その点も魅力的です。

 文化の違いとして、一つは、ドイツをはじめとしたおそらくヨーロッパの文化全般では、人生の終わりについて考えることを避けようとしているところがあると思います。それは今日の社会では、ある程度役立つことがありますが、結局のところ私たちは死を無視することはできません。死というものは常に次の角を曲がったところにあり、私たちを悩ませます。

 だから死というもの、より一般的に言えば「最期の瞬間」というものを、たとえば柊サナカさんの小説のように、癒されて心温まる形で、異なる文化のレンズを通して見つめた物語を読むことで、ヨーロッパの読者達は死を過剰に恐れることなく見つめることができるようになるのだと思います。そして死が生の片割れであり、本質的に不可欠な部分として受け入れることで、私達はより一層、現在を生きていることを大切に思えるのかもしれません。

 

──ありがとうございました。

 

【あらすじ】
大切な人へ、あなたが最後に贈りたいものは何ですか? 依頼人の死後にしかるべき人の元へ遺品を送り届ける「天国宅配便」で働く七星律は、今日もバイクで配達先へ向かう。友人たちに先立たれた孤独な老女、祖母と喧嘩別れした女子高生、幼馴染みと結ばれなかった中年男、顧問の先生を喪った部活仲間……。会えなくなった人から届いた思いがけない小包みの中身とは? 言いそびれた言葉と伝えられなかった想いにきっと涙があふれる。今を生きる力が湧いてくる感動作、待望の文庫化!

 

質問に答えてくれた人:カトリン・アエ/シニアエディター
HOFFMANN UND CAMPE VERLAG GmbHHoffmann und Campe Verlag (hoffmann-und-campe.de)