【あらすじ】
主人公は、元教師のライター・筒見芳晃。10歳年下の妻と可愛い娘に恵まれ平和な家庭を築いていたが、突如、妻が行方不明に。交番に駆け込んだ芳晃は、妻の逮捕を告げられ、茫然自失する。結婚して15年余、妻の勤め先はおろか、過去も、裏の顔も、何も知らなかった……。だがそれは、悪夢のほんの序章に過ぎなかった。ようやく妻が釈放となり、迎えに行った芳晃は、警察署でとんでもない事態に遭遇。惨劇の幕が切って落とされる。
全国の書店員や映像メディア関係者、本好きインフルエンサーらが注目
許せぬアイツを、この手で、この世から消し去れたら。
今年7月刊行の『いっそこの手で殺せたら』は、そんな誰もが「一度は」覚えのある激情に支配された凶烈ミステリーだ。
発売前の作品を先読みできるWEBサービス「ネットギャリー」で公開されるや、全国の書店員や映像メディア関係者、本好きインフルエンサーら会員のリクエストが殺到。著者の小倉日向氏はこれが2作目の新人ながら、7月期にはページビュー2位・リクエスト3位・レビュー数2位を記録したというから驚きだ。
『まさに"猛毒"!!! ある日突然、妻が逮捕され、平穏な日常が壊れ謎が謎を呼ぶスリリングな展開に、ページを捲る手が止まらなかった。真相に近づくにつれ、恐怖と嫌悪が膨れ上がり、これから以上ページを捲ってはいけないと思いつつも一気に読み終えた』(レビュアー)
『ネタバレなしでこの作品を語るのはとても難しいです。ただ、読んでいてどの登場人物も怪しいような気がしていましたが、ほとんどの人は最後には「なるほど…」と思えたのがすごいと思いました。とにかく面白くて本当に一気に読んでしまいました!』(書店関係者)
など、「一気読み」を示唆する熱烈レビューも多数。確かに、虫酸が走るような場面も続々出てくるのに、どうしても「その先」が知りたくなる。いったい、黒幕は誰なのか? 毒と業が渦巻く不穏な物語の核となっているのは、世界中で大問題となっている性暴力だ。実は、著者の小倉氏も主人公同様、かつて中学の教壇に立っていた元教師だという。
「もちろん、当時実際に見聞きしたことが作品に反映されているわけではありません。ただ、昨今の#MeToo運動などに触れるにつけ、私自身が現場で見過ごしてきたことも少なからずあったのではないか、と思い至りました」(小倉氏)
もしも大切な人や自分自身が、一生消えない傷を心身に刻みつけられてしまったら――? 帯のキャッチコピーにある通り、読むのにかなりの「覚悟」が問われることは間違いない。だが、読後感は意外にも悪くなく、むしろ爽快かもしれない。痺れるような心地よい余韻に、しばし動けなくなるはずだ。