徳川家康影武者説、坂本龍馬スパイ説など日本の歴史には数々の伝説がある。新たな歴史的資料の発見などがきっかけになり、たびたび歴史好きたちの間で白熱の議論を巻き起こし「新説」として注目されるが、今回、小説として「歴史の新説」に切り込んだ作品が発売された。

 それが『徳川埋蔵金はここにある―歴史はバーで作られる2―』だ。著者の鯨統一郎氏は『邪馬台国はどこですか?』で鮮烈なデビューを飾り、以降、歴史ミステリー、本格ミステリーのジャンルで数多くの小説を発表してきている。そんな鯨氏の99冊目となる作品が本書だ。

 前作『歴史はバーで作られる』では、場末のバーの美人バーテンダーと自称歴史学者の老人VS気鋭の歴史学者とその生徒である主人公が歴史バトルを繰り広げ話題になった。今回も、同じ舞台、同じ登場人物たちの間で「4つの新説」が唱えられていく。なかでも注目は、バブル時代に糸井重里氏が中心となりテレビで大々的に発掘調査されたものの、いまだ見つかっていない「徳川埋蔵金」のありかについて作中で新説を披露している点だ。

 明治維新の際に江戸城を政府側に明け渡すことになった徳川幕府が再起のために密かに城中の金庫から運び出したとされる360万両(現在の価値に換算すると3000億円とも)もの金。その行方を推理していくと、意外すぎる場所に行き着く。はたして、その場所に今、何が建っているのか……。

 ほかにも、天草四郎の正体が推理されたり、応仁の乱の真の勝者を議論したり……小説ながら「本当にそうかも」と思ってしまう連作歴史ミステリー。小説好きはもちろん、日本史好きの方にも手にとっていただきたい一冊だ。

 

 源義経の正体、八百屋お七の物語に隠された陰謀などを解き明かすシリーズ第1弾『歴史はバーで作られる』も絶賛発売中!