恐ろしい。
ただ、この一言に尽きる本である。
トランプ大統領の暴挙、ウクライナやガザの絶望的な状況、イスラエルと米国によるイランの核施設攻撃──すべては8年前、米国屈指の“知の巨人”によって予言されていたのをご存じだろうか。さらに巨人は、まさに世界を破滅へと導かんとする支配者たちの正体を、とっくに暴いていることも。
マサチューセッツ工科大学名誉教授、ノーム・チョムスキーが渾身の力で書き上げた衝撃の警告本『誰が世界を支配しているのか?』。
決してメディアが取り上げない不都合な真実の数々を暴露し、近未来の世界情勢を不気味なほどに言い当てた名著が待望の文庫化。世界中で武力衝突が相次ぐキナ臭い今、あまりのタイムリーさに再び熱い注目を集めている。
なかでも身震いさせられるのが、刊行時はオバマから政権交代を果たしたばかりだったトランプ大統領についての言及。
キワモノの不動産王のイメージで揶揄されることも多かった彼を、「一番の特徴は予測不可能なところ」と早々に看破。何をするのかまったくわからない人物として、深く憂慮していたのだ。
憂慮は的中し、トランプは今や、世界で最も「何をするのかわからない」危険人物となった。急進的な自国第一主義を掲げて他国の窮状など堂々と無視。力こそすべて、利益こそすべてとばかりに世界を混乱に陥れている。
だが、これはトランプだけが特殊ではない。実は前大統領のオバマも、クリントンも、歴代の米国の指導者たちは政党にかかわらず、みな同じ穴のむじなだったとチョムスキーは断言する。
本書第22章のタイトルにもなっている「終末時計」は、人類最後の日までの残り時間を象徴的に示す数字として、毎年、米国の科学雑誌が発表しているものだが、著者が執筆中だった2015年は「あと3分」。今年はなんと「あと89秒」まで針が進んだ。言うまでもなく、最短を更新している。
たった10年で残り時間がほぼ半減したことには恐怖しかない。ただ、知の巨人には、すべてお見通しだったのだろう。
終末時計の針をググッと進ませる張本人ども。それは、「すべては自分のために、他人のためには何もしない」という処世訓に骨の髄まで染まった米国の指導者たち。さらに彼らと結託し、戦争の陰で甘い汁を吸いまくる、ヘドが出るほど醜悪な“金満怪物”たちである。
自国の民意すら歯牙にもかけず、己の利益のためならば、中東やアフリカの国々を徹底的に踏みにじる。一流メディアも「真実を報道しない」という意味で、支配者の片棒を担いでいるだろう。
日本もこの「支配」から逃れられない。気付けばもはや、私たちは台湾有事の最前線に晒されている。これから日本は、世界は、どうなるのか? どうすれば最悪のシナリオから脱出できるのか?
答えはすべて、この戦慄の書に記されている。