2005年に双葉社より刊行された短編集『Presents』。小説を角田光代さん、絵を松尾たいこさんが手掛けたコラボレーション本です。全12編に、美しいカラーの絵が添えられています。のちの文庫版もあわせ、26万部以上のベストセラーとなりました。

 

Presents

 

 こちらの単行本の初回限定だったラッピングカバー版が、この度20年ぶりに復刻しました! 今年は、角田光代さんの作家デビュー35周年にあたる節目の年でもあります。

 復刻記念として、お二人によるトークイベント&サイン本お渡し会が、3月12日に誠品生活日本橋で開催されました。

 

 イベントでは、会場観覧とオンライン視聴の方々がそれぞれ、角田さんと松尾さんのトークを楽しみました。20年ぶりの復刻ということについて角田さんは「20年も経ったなんて信じられない、まだ7年くらいのつもりでした」と驚きをあらわに。松尾さんは「20年後も作家、イラストレーター、デザイナー、編集者がそれぞれ同じ仕事を続けて、同じ本にまた携わったことがすごい」と感慨を込めて話しました。

 

 

 つづいて本書のテーマにあわせ、「今までもらったプレゼントでいちばん嬉しかったものは?」という質問に、角田さんは命のプレゼントとして「西原理恵子さんからいただいた猫です」と。今年15歳になった愛猫トトへの愛情が伝わってきました。

 松尾さんが挙げたのは、旦那様からの言葉のプレゼント。昔、自分に自信を持てなかったという松尾さんは「自分ができないことを数えるのではなくて、君は素晴らしい絵を描けるんだからそれでいい」と言われ、以来、前向きな気持ちになれたそうです。

 

 

 また、参加者の方々から寄せられた「自分がもらったいちばん嬉しかったプレゼント」というアンケートの回答についても、トークが繰り広げられました。「手塚治虫のサイン」という回答に、角田さん自身は池澤夏樹さんのサイン本をもらったことが嬉しかったと言い、のちに氏の個人編集による「日本文学全集」で『源氏物語』を現代語訳することになった巡り合わせを語りました。一方の松尾さんは「当時の彼氏に買ってもらった、高島屋の物産展で売っていた高級ごま油」という回答に、「きっとまだ若い彼氏だったでしょうに、このセンスがとても素晴らしい!」と笑顔でコメントしました。

 イベント後半には、本書のブックデザインを手掛けた鈴木成一さんも特別ゲストとして登壇。鈴木さんが審査員を務めた絵のコンペで松尾さんを一等に選んだことによるお二人の出会いをはじめ、『Presents』をプレゼントそのものの形にしようと思ったアイデアについてなどデザインの舞台裏を紹介してくださいました。参加者の方々も、普段めったに聞くことのできないブックデザインの裏側に興味津々の様子で聞き入っていました。

 

ブックデザイナー・鈴木成一さん

 

 最後に、作家デビュー35周年のお祝いと、『方舟を燃やす』(新潮社刊)で第59回吉川英治文学賞を受賞されたばかりの角田さんに、松尾さんから花束の贈呈が行われ、会場は温かな拍手で包まれました。鈴木さんによる「このような場に立てたことは、私にとってもまさにプレゼントです」という言葉でイベントは締め括られました。

 イベント終了後、角田さん、松尾さんが参加者と一人ずつ言葉を交わしながらサイン本とオリジナルポストカードを手渡して、日本橋での和やかな一夜は幕を閉じました。