突然ですが、あなたは見える・・・人ですか? いえ、見えなくてもいいんです。その代わりに殴れたりします? 幽霊を。

 本書『ヒマかっ! Get a Life!』は、そんな変な特技を持つ先輩「頭島さん」と17歳の家出少年の桧山光希、彼らの兄貴分である陽気な「奥さん」の活躍を描く新感覚ゴーストバスター小説だ。3人は、迷惑な幽霊をぶん殴って追い出したりする一方、無実の幽霊に着せられた濡れ衣を晴らしてやったりもする。

 そんな胸がスカッとしたり、じんわり温かくなったりする『ヒマかっ! Get a Life!』の読みどころを「小説推理」2023年11月号に掲載された書評家・佳多山大地さんのレビューでご紹介します。

 

 

 

■『ヒマかっ! Get a Life!』日明恩  /佳多山大地 [評]

 

「誰にも迷惑を掛けずにただいるだけの幽霊に、この犯人は罪をなすりつけている」──。僕らはゴーストバスターズ? いいや、時には幽霊の肩を持たせてもらいます!

 

 ヒマかっ! だなんて、ずいぶん軽いノリのタイトルだけれど、これは英語のGet a Life! の日本語訳の一例。時と場合と、声を掛ける人と掛けられる人との関係性により、「ちゃんと生きろ!」や「人生を取り戻せ!」というメッセージ性を帯びてくるのだ。

 本書の主人公は、17歳の家出少年、桧山光希。広島から《青春18きっぷ》を利用して東京に出てきた光希少年は、偶然の出会いから足場工事会社「須田SAFETY STEP」でアルバイトをすることに。ところが、紹介してもらったアパートの部屋が、じつは出る部屋・・・・だったのだけれど──さっそく出てきた幽霊を兄貴分の社員二人と退散させたことが噂を呼び、光希らは心霊がらみのトラブルシューティングに次々駆り出されるはめになる……!

 光希少年の家出には、汲むべき事情がある。幼いころから幽霊が見え、話をすることもできた光希を、彼の母親は霊感商法のため利用してきたからだ。中学卒業間近に起きた、ある〈事件〉をきっかけに一度は霊感を失っていた光希。だが、一人暮らしを始めるアパートの部屋で幽霊がまた見えるようになったのは、須田SAFETY STEPの男前社員「頭島さん」が、幽霊は見えないのに・・・・・・・・・つかまえてボッコボコにすることはできる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・特異体質(?)の持ち主だったからみたい。頭島さんの異能に触れ、せっかく消えていた光希の霊感がふたたび発現したようだ。

 幽霊が見えて、意思疎通もできる光希少年。幽霊は見えないのに、物理的な攻撃は可能な頭島さん。そして、霊感はさっぱりだが、陽気で気前がいい「奥さん」こと奥隼人。とにかく、この三人組のバランスがいい。彼ら即席ゴーストバスターズの仕事ぶりに胸がすくのは、三人全員が幽霊を「生きている人間の延長線上でとらえている」ためだろう。いたずらな幽霊をぶん殴って追い出しもする一方、幽霊に着せられた濡れ衣を晴らしてやったりもするのだ。

 ご存じ、本書の著者である日明恩は、メフィスト賞受賞のデビュー作『それでも、警官は微笑う』(双葉文庫)を嚆矢とする警察小説シリーズと、吉川英治文学新人賞候補にも挙がった『鎮火報』(双葉文庫)を皮切りに始まる消防士物を作家活動の両輪にしている。今度の新刊『ヒマかっ!』は、死者が見えてしまう少年と退職刑事の相棒バデイ物『ギフト』(双葉文庫)の系譜に連なるもので、人と幽霊の悪意にも善意にも接しながら自立を目指す少年を描いた異色のハートフル・心霊コメディだ。