チャンネル登録者数72万人超えの推理系ユーチューバーにして、「ネット界の江戸川乱歩」とも呼ばれる作家・雨穴氏。10月20日に上梓した自身初となる書き下ろし長編小説『変な絵』(双葉社)は、全国主要書店の週間ランキングで1位を独占し、早くも25万部を突破している。今回、そんな雨穴氏のファンであり、自身も今年『ワカレ花』(双葉社)で作家デビューを果たした、小説紹介クリエイターのけんご氏の対談が実現。動画クリエイターとしても活躍するお二人が、創作活動について語り合った。
■互いに衝撃を受けた異彩を放つ動画とは
──お二人は、動画クリエイターとしても活躍中です。
けんご:僕が動画をアップしているTikTokは、オススメ欄に偶然流れてきて運命的な出会いをし、レコメンドされていくショートムービーのプラットフォームなんですけど、雨穴さんが動画をあげているユーチューブはそうじゃない。視聴者に選んで見てもらわないといけないですし、選んでもらえたからには視聴者を満足させる良質なコンテンツでないといけないんです。雨穴さんは、動画を見てもらうために意識していることはありますか?
雨穴:自分が面白いと思うものを作っても、視聴者に面白いと思ってもらえるとは限らない。もしかしたら、自分の面白いが人とずれているかもしれない。なので、工夫するというよりかは、とにかく頑張って作る。幼稚かもしれませんが、自分が持てる力を全部つぎこんで、とにかく高度な映像を作る。そういう気持ちでいつもやっています。
けんご:なるほど! 雨穴さんの動画って、毎回、ほんとにクオリティが高くて……。今のユーチューブって、動画の長さが30分を超えるものが当たり前のような時代になってきていると思うんです。僕としては、あまり長い動画はどうなのかなって思うんですけど、雨穴さんの動画って長ければ長いほど嬉しくて(笑)。コメント欄を見ても、雨穴さんの動画は50分とか、長いものであるほど、めちゃくちゃ嬉しいというものが多い。ほんとに類を見ないユーチューバーなのかなって思っています。
雨穴:ありがとうございます。嬉しいです。
けんご:僕自身も、動画クリエイターとして見習わなければ……!
雨穴:恐れ多いです……。私はふだん、TikTokを見ないのですが、けんごさんの動画を拝見して驚きました。こんなにも興味をそそられる本の紹介は、今まで見たことがないです。本を紹介するとき、台本を先に考えているんですか?
けんご:そうですね。僕は、話す内容を事前に、一言一句書き起こしています。『変な絵』も今日(対談日)書き起こして、今日撮影して、今日投稿したんです。読んですぐに台本を作って、撮影・編集を行っている感じですね。
雨穴:台本を考えるときに気をつけていることってありますか?
けんご:僕は小説を読んだことのない方に向けて動画を制作しているので、“よけいな文言を抜く”ってことを意識していて……。たとえば、東野圭吾さん。今や日本のエンタメ小説界を引っ張っている大作家さんだと思うんですけど、小説に興味ない、東野圭吾さんすら知らない人って僕はたくさんいると思っているんです。なので、東野圭吾さんの小説を紹介するときに、「これは東野圭吾さんの最新作です」と紹介するのではなくて、その作品の良さだけを伝えることを意識しています。
雨穴:ガワは一切省いて、コンテンツのことだけを伝えるって感じなのですね。どの動画も大変魅力的だったのですが、東野圭吾さんの『白夜行』の紹介動画を見たときに、他の人の紹介の仕方と違うなと思いまして……。あの本の魅力を他の人に伝えるときに、確かにあの動画の作り方はすごく効果的というか、『白夜行』を紹介するときに最適なやり方だなと思って、個人的に感動しました。
けんご:すごく嬉しいです(笑)。ありがとうございます!
──最後に、それぞれ『変な絵』と『ワカレ花』の読みどころを教えてください。
雨穴:『変な絵』は、91枚のイラストと一緒にミステリーの謎を解くなど、本当に読書が好きな方だけでなく、読書に慣れていない方でもスラスラ読むことができる本格派ミステリー小説になっています。1章に関する動画(この絵の仕掛けが解けますか?『変な絵』 第一章 - YouTube)はすでにユーチューブで公開していますので、ぜひご覧ください。また、第1章「風に立つ女の絵」の朗読動画(62分)も特典としてついていますし、今後、物語の「あとがき」にあたる歌をYouTubeにアップします。本作の謎解きの最大のヒントが歌詞に込められていますので、小説と一緒に見て聞いて楽しんでいただけますと幸いです。よろしくお願いします。
けんご:『ワカレ花』は、主に中高生の方々がこの作品をきっかけに、小説の面白さや感動、成功体験を感じてほしいと思って書きました。この小説が、有名な作家の皆様が書かれた名著と呼ばれる作品への入口になりましたら嬉しいです。まだ小説を読んだことのない方に、ぜひ読んでいただけたらと思います。
【あらすじ】
『変な絵』
ホラー作家兼YouTuberである雨穴氏による、自身初となる11万字書き下ろし「長編小説」! タイトルは『変な絵』。見れば見るほど、何かがおかしい? とあるブログに投稿された『風に立つ女の絵』、消えた男児が描いた『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、山奥で見つかった遺体が残した『震えた線で描かれた山並みの絵』……。いったい、彼らは何を伝えたかったのか――。9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!? その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる! 今、最も注目を集めるホラー作家が描く、戦慄のスケッチ・ミステリー!
『ワカレ花』
TikTokで薦めた作品が続々重版! 話題の小説紹介クリエイター・けんごが手がけた初の小説は、花をモチーフにした恋愛小説。高校生の遥は通学電車で気の立った白猫に遭遇。戸惑う彼女を助けたのは名前も知らない男子高校生。毎朝、同じ電車で見かける彼を振り向かせようと、遥は文庫本を手にするように……。
雨穴(ウケツ)プロフィール
ホラーな作風を得意とし、“ネット界の江戸川乱歩”とも呼ばれるウェブライター。YouTuberとしても活動中で、登録者数は72万人を超え、YouTubeの総動画再生回数も8000万回を突破。白い仮面と黒い全身タイツが特徴的。原案を務めたドラマ『何かおかしい』(テレビ東京)シリーズも話題を呼んでいる。
Twitter:https://twitter.com/uketsuHAKONIWA
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UChuwE7hMjONeLU54uC8Vigw
けんご プロフィール
小説紹介クリエイター。スマホアプリ「TikTok」などのSNSで、わずか30秒ほどで小説の読みどころを紹介する動画を次々に投稿。作品の的確な説明と魅力的なアピールに、SNS世代の10~20代から絶大な支持を得ている。『ワカレ花』で小説家デビュー。
Twitter:https://twitter.com/kengo_book