親の具合が悪くなる前に最低限やっておきたいことチェックリスト

 

 ウクライナ侵攻や原油高、円安の影響であらゆるモノが値上がりし、庶民の財布は日々やせ細るばかり。そこへさらに親の介護が降りかかってきたら、共倒れの危機に見舞われてもおかしくないだろう。

 施設費、医療費、オムツ代。入浴介助を他人様に頼めば、介護保険を使っても決して安くはない人件費がかかる。気持ちだけではどうにもならない、「お金じゃないけど、お金よね~」の世界。それが介護なのだ。

「大丈夫。ウチの親、けっこう貯め込んでるらしいから、いざとなったらそれを使うし」と目論んでるアナタ。甘い!! なんと頼みの綱の親の預貯金は、認知症になったら最後、実子といえども事実上動かせないという。

 8月26日発売の新刊『増補改訂版 親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』の著者・鳥居りんこさんも、そんな恐ろしい状況に晒されたひとりだ。「以前、認知症の母の代わりにATMで預金を下ろそうとしたら、教えられた暗証番号が違っていて、冷や汗ダラダラものでした」と明かす。

 同書に掲載されている「親の具合が悪くなる前に最低限やっておきたいことチェックリスト」は、ハードな実体験から著者自身が導き出しただけに、説得力十二分だ。たとえば――

 

・親のキャッシュカードや実印・印鑑登録カード、マイナンバーカードの有無
・「連帯保証人」になっているのか、いないのか
・「子供や孫名義の預金」があるのか、ないのか
・「生命保険」があるのか、ないのか
・「ゴルフ会員権」「リゾート会員権」などがあるのか、ないのか

 

 など全23項目にわたる詳細なリストは必見。特に、ゴルフ会員権は退会手続きが終わっていないと、後日、100万円単位の会費を請求されることもあるため要注意だという。

 

月々の介護や医療費を節約できる行政サービスを駆使して6万円戻ってきた!

 

 どうにか介護費用を親の財産から捻出できたとしても、油断は禁物。介護保険料と税金で運営されているお得な特養ホームも、昨年8月に実質大幅値上げされている。施設に入れれば安心というわけではなく、病気になれば入院費用と併せてダブルの出費。著者の母も国指定の難病にかかったうえ、生来の病院好きが高じて医療費は凄まじいものだったそうだ。長生きするほど、“軍資金”は確実に減っていくのである。

 しかし! あきらめることはない。月々の介護や医療費を節約できる行政サービスを駆使すれば、数万円単位の払い戻しを受けられるケースもあるというから、利用しない手はないだろう。

 著者の場合、介護費用と医療費を併せて節約できる「高額医療・高額介護合算療養費制度」を駆使し、約6万円が戻ってきたという。もちろん、お上はやすやすと払ってはくれない。書類をいくつも揃え、「もんのすごくわかりにくい」申請書に漏れなく記入し、役場まで足を運ぶという介護初心者には高いハードルが課せられている。だが、やらなければ、払いすぎたお金は永遠に戻ってこない。本書はそんな介護ビギナーの「わからん!」に丁寧に答えて応援する超裏ワザが豊富に紹介されている。

 介護費用の節約術だけでなく、高齢者を狙う詐欺対策、成年後見制度や家族信託のメリット・デメリットなど、最新情報の数々は「知らなきゃ泣き見る」ことばかり。なかでも、空き家となった実家やセカンドハウスの売却問題は、リアルかつ具体的な解決例に膝を打つこと間違いなしだろう。

 介護費用を1円でも安く済ませられれば、ささやかな心の余裕が生まれる。イライラしがちな親の介護も、少しは穏やかに乗り越えられるかもしれない。どんな人にも必ずやってくる“その日”に備えて、ぜひ読んでおきたい1冊だ。