2021年は過去に例を見ない形でベストセラーが数多く生まれた。そのきっかけのひとつは、TikTok内の本の紹介において、もっとも影響力をもつTikTokクリエイターであるけんごさんの発信からだった。『残像に口紅を』(中公文庫)や『交換ウソ日記』(スターツ出版)など、けんごさんが紹介した小説は多くの書店で品切れが相次ぎ、十数作品が重版となった。
けんごさんのTikTokフォロワー数は27万人を超える。そんなけんごさんが2021年に新たな試みとして、「今年読んで最も面白かった本」を決める「けんご大賞」を発表。ベストオブけんご大賞に『死にたがりの君に贈る物語』(綾崎隼・ポプラ社)が選ばれ、その他10作がけんご大賞を受賞し、1作の特別賞が決定した。
けんご大賞に選ばれたカツセマサヒコさんの小説『夜行秘密』は7月に双葉社から発売されて、たちまち5万部を超えるベストセラーに。本書は川谷絵音率いるバンドindigo la Endのアルバム『夜行秘密』から創り出した激情の恋愛譚で、10代~20代を中心に「登場人物に共感できる」「切ないラストが胸を打つ」と絶賛されている。
けんごさんは本書について、「価値観、恋愛、SNS…現代を生きる人に寄り添う、今こそ読むべき作品です」とコメントしている。
受賞したカツセマサヒコさんは、「『若い人が本を読まなくなった』と言われて久しいですが、けんごさんの情報発信への反応を見ていると、小説の世界はもっと多くの人に愛されていけると勇気をもらえます。この受賞をきっかけに、自分の本からまた別の本へと、物語に興味を持つ方が増えたら幸いです」と寄せた。
2022年もけんごさんがどんな本を紹介していくのか楽しみだ。
その他の2021年けんご大賞受賞作品は以下の通り。
ベストオブけんご大賞 『死にたがりの君に贈る物語』(綾崎隼/ポプラ社)
特別賞 『白い薔薇の淵まで』(中山可穂/河出文庫)
大賞 『N』(道尾秀介/集英社)
大賞 『オーラの発表会』(綿矢りさ/集英社)
大賞 『君の顔では泣けない』(君嶋彼方/KADOKAWA)
大賞 『白鳥とコウモリ』(東野圭吾/幻冬舎)
大賞 『檸檬先生』(珠川こおり/講談社)
大賞 『月曜日の抹茶カフェ』(青山美智子/宝島社)
大賞 『星を掬う』(町田そのこ/中央公論新社)
大賞 『ばにらさま』(山本文緒/文藝春秋)
大賞 『夜行秘密』(カツセマサヒコ/双葉社)
小説『夜行秘密』HP
https://www.futabasha.co.jp/introduction/2021/yakouhimitsu/
けんご小説紹介
https://lit.link/kengobook