夜中に何げなくフリマサイトを眺めていた主人公は、とある商品に目がとまる。それは、高畑朋子という人物の保険証が入ったままの、中古の財布だった。主人公は、娘を誘拐された高畑朋子という母親、当時ニュースでも取り上げられていたこの誘拐事件を思い出す。
なにかに吸い寄せられるように、その財布を購入し、入っていた保険証やレシートを手掛かりに当時の事件の真相を解明しようと奮闘するのだった──。
予約受付開始後、またたく間に話題を呼び、「Amazon本の売れ筋ランキング」3位、初版3万部という異例のスタートを切った『人の財布~高畑朋子の場合~』。この類まれな作品の魅力を編集担当が語る。
ほかとは一線を画す、物語への没入感。これまでの“読書”の常識が一変するはずです
他人の給与明細を実際に購入し、その企業の謎を調べる『人の給与明細』。実在するカレンダーとwebサイトを読み解き夏の終わりに殺される少女を救う『人のカレンダー』。「給与明細」や「カレンダー」を、謎を解いてもらうアイテムとして実際に販売し、これまで画面のなかで遊ぶことに限定されていたゲームというジャンルを、現実世界でも遊べるものにしてきた「第四境界」。物語を日常生活に侵蝕させてきた天才たちが手掛ける“小説”とあって、その没入感はこれまでの書籍とは大きく違ったものになりました。
まずは、そのビジュアル! 財布型のカバーに、レシート調の帯が巻かれているというデザインで、主人公同様、読者のみなさまも“財布を購入する”というところから物語を始めることができます! このアイデアは、第四境界のみなさまと何度も打合せを重ねて生まれたもので、この書籍のコンセプトを決定づける案でもありました。

そして、財布を開くと始まるストーリーももちろん重厚です。ネタバレになるので、内容についてはあまり言えませんが、もし、主人公と同じように、他人の財布を購入して、保険証を見つけてしまったら、どのような行動をとるだろうか、と気づけば自分を重ね合わせているでしょう。
そして、今回の書籍に挟まれた特典「伊澤政則の名刺」も新しい試みかと思います。
この特典は、物語に登場する探偵・伊澤政則の名刺で、裏面にはメールアドレスが記入されています。正しい手順でこのアドレスに連絡すると、なんと返信がきます。ここからは、探偵助手として、読者のみなさまは事件のアナザーストーリーを体験することになります。小説のなかにいた登場人物が、日常生活に飛び出してくる──。ここにも第四境界のエッセンスが詰まっています。

物語に没入するどころか、物語のほうから私たちに迫ってくる。このような読書体験ができるのはこの1冊だけなのではないでしょうか。