日本のエンタメ界にすっかり定着した韓国ドラマの面白さを独自の視点で描いた新刊『韓国ドラマ究極ベスト選 史上最高の韓流傑作は何か』。執筆した康熙奉氏に、本書の特徴と韓国ドラマの魅力について聞いてみた。
不動の1位だった『冬のソナタ』を超える作品があるのか
──最近の韓国ドラマの傾向をどう捉えていますか。
康熙奉(以下=康):レベルがますます高くなっていると実感しています。2025年も傑作が多いですよね。『オク氏夫人伝』から始まって『トラウマコード』『おつかれさま』『エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち』と来て、ワクワクしている間に『暴君のシェフ』にも夢中になりました。時間が足りないと痛感するほど、見るべきドラマが本当に多いですね。
──そういうタイミングで今回、『韓国ドラマ究極ベスト選 史上最高の韓流傑作は何か』を出版されました。
康:もともとは、『韓国TVドラマガイドONLINE』に書いてきた連載原稿が元になっています。しかし、各ドラマの論評が個別に並んでいるだけだったので、そこに自分が見た過去作品のランキングや俳優別のドラマ傾向なども加えて、コンパクトに1冊としてまとめてみました。
──本書を出す狙いをどこに置いていましたか。
康:配信サービスでドラマを見るようになって大切なのが、膨大な作品の中から何を選択するか、ということではないでしょうか。とにかく、ドラマを見る選択肢が増えすぎましたからね。特に韓国ドラマはジャンルが多岐にわたっており、自分の好みに合ったドラマを選ぶのに迷うこともあります。そこで、時代劇、ラブコメ、人生ドラマ、新作ドラマなどから選ぶ際の指針を作ってみたいというのが、本書の目的になっています。
──タイトルには「史上最高の韓流傑作は何か」という問い掛けが入っています。
康:本書の中で一番つきつめているのが、史上最高の韓国ドラマは何だったのか、ということです。自分にとって最高のドラマを意識するためにもランキング選定を定期的に作っていましたが、新作ドラマの傑作が自分のランキングのどこに入ってくるのかが気になります。今までは『冬のソナタ』が不動の1位だったのですが、それを超える作品があるのかどうか……本書を通して改めてそのことを考えてみました。
──第6章で韓国ドラマの全体を総括する流れになっていますね。
康:第1章から第5章まではジャンルごとに作品を分類していますが、思わぬ発見がありました。それは、各ドラマの相違点と共通性に改めて気づくということです。そういう発見を生かしながら、第6章では、韓流ブームを牽引した名作10本、レジェンド時代劇この10本、ありえない設定の究極7本、時代劇を彩った最高ヒロイン&男性主人公10人、ラブコメ歴代ベスト10、史上最高傑作ベスト10……といった切り口で韓国ドラマに光を当てましたが、本当に各作品の内容が多彩で制作側の努力と工夫に感謝するばかりです。
──たくさんの韓国ドラマを見てきて、つくづく感じることは何でしょうか。
康:韓国ドラマの良さというのは描写が繊細で感情の奥底まで表現すること。それは、作り手がありのままに見せる、省略しないで見せる、ということを徹底しているからだと思います。視聴者に、全体の流れで悟ってほしい、という見せ方をしないのです。だからこそ見たくない場面も出てくるのですが、それもまた韓国ドラマの醍醐味であって、「何でもあり、そして、何でも見せる」というこだわりが逆に爽快感につながってきます。いわば、サービス精神が旺盛なところが韓国ドラマの真髄だとも感じています。
──配信サービスを巧みに生かすことも、良き韓国ドラマにめぐりあう秘訣になっていますね。
康:今は優れたドラマを自分の好きなときに見られる環境が整っています。とはいえ、その時々の気分によって見たくなるドラマも違ってきます。仕事が終わって疲れているときに癒しとして見たいドラマ、休日に腰を据えてじっくり見たいドラマ、通勤やレジャーの際に電車の中で見るドラマ……視聴するシチュエーションが変わってくる中で、どんなドラマが今の自分にふさわしいのか。そんな観点からドラマを選んでいくと、生きていて良かった、と思えるドラマがかならず出てきます。その感性を大切にしたいですね。
──たとえば、ドラマを選ぶ際の基準をどこに置いていますか。
康:私の場合は、主演俳優を重視してドラマを選んでいます。それぞれの人気俳優が主演作を選ぶ過程には、知られざるドラマ性があると思います。そこに注目しています。また、好みの俳優がその人なりに選んで打ち込んだ作品には大きな信頼性があります。それゆえ、俳優中心にドラマを選んでいくと、高い確率でいいドラマに会える気がします。
──韓国ドラマはご自身の人生にどのような影響を与えてきましたか。
康:二十数年間韓国ドラマを見てきて、いろんな作品に印象的な記憶があり、その記憶こそが最高の贈り物だと思っています。そういった記憶を呼び起こしながら、新しい作品も見ています。過去のレジェンド級の作品と比較しながら見ていると、新作の輝きもよくわかります。そういう意味では、たくさんの作品を見ていくことによって自分自身も鍛えられますし、自分の引き出しも増えてきます。やはり、ドラマの奥の深さが実感できるときは、自分にとっての黄金の時間です。
──韓国ドラマがないと生きていけない、という感じですか。
康:生きていても味気ないでしょうね。結局、自分の人生を変えてくれたドラマ、なくては生きていけないと思わせてくれたドラマ……それが、人生の財産になっています。本書では、心を突き抜けるドラマ愛を感じながら書くことができました。
──ありがとうございます。これからも韓国ドラマの傑作がたくさん出てくることを期待したいですね。