斬新なアイデアでミステリー界を沸かせる気鋭の作家が大集合しました! 芦沢央さん、阿津川辰海さん、伊吹亜門さん、斜線堂有紀さん、白井智之さんによるすべて新作、読み味いろいろな『斬新 THE どんでん返し』。1冊で5回楽しめる本作を一話ずつご紹介いたします。

 

斬新 THE どんでん返し

 

 

 

■「踏み台」芦沢央

 人気アイドルグループ〈風穴17〉のメンバーである「みのり」。彼女は元カレからのストーカー気味な追っかけに頭を悩ませている。しかし2人の関係を知らないマネージャーは、熱心なファンはつかまえておけという方針で、頼ることができない。元カレへの対応だけでも苦しいのに、下剋上を狙う後輩メンバーの存在も疎ましい。どうしたら、自分が望む状況を作り出すことができるのか。考えた末、みのりが起こした行動とは──。

 

芦沢央(あしざわ・よう)
1984年生まれ。千葉大学文学部卒。2012年『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。17年『許されようとは思いません』で吉川英治文学新人賞候補、19年『火のないところに煙は』で静岡書店大賞受賞、山本周五郎賞候補、本屋大賞ノミネート。21年『汚れた手をそこで拭かない』が直木賞候補及び吉川英治文学新人賞候補となる。22年『神の悪手』で将棋ペンクラブ大賞文芸部門優秀賞受賞。他の著書に『カインは言わなかった』『僕の神さま』『夜の道標』など。

 

■「おれ以外のやつが」阿津川辰海

 出版社カメラマンの水野を名乗る「おれ」の真の顔は殺し屋。今回のターゲットは、双子の人気ミステリー作家の弟の方。2人は双子だけあって顔が似ているが、弟は車椅子に乗っているので間違う心配はないはずだったのだが──。

 

阿津川辰海(あつかわ・たつみ)
1994年生まれ。東京大学卒。2017年、光文社の新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により『名探偵は嘘をつかない』でデビュー。以後、22年までミステリ・ランキングの上位を席巻。また20年(『紅蓮館の殺人』)、21年(『透明人間は密室に潜む』)、22年(『蒼海館の殺人』)と3年連続で本格ミステリ大賞候補となる。他の著書に『星詠師の記憶』『入れ子細工の夜』『録音された誘拐』、共著に『あなたへの挑戦状』など。

 

■「遣唐使船は西へ」伊吹亜門

 遣唐使船4隻が嵐に巻き込まれた。四の船だけがはぐれ他船の行方は杳として知れず。乗員たちの士気低下、飢え、渇きが次第に募り、いさかいが起こり、正気を失った者が海へと身を投げる……。そんな中、僧侶の説法が人々の心を救った。しかしそれも束の間、船上で密室殺人事件が発生。犯人は、その動機は、そのからくりは──。事件が解決した時、きっとあなたは天を仰ぐことになる。

 

伊吹亜門(いぶき・あもん)
1991年生まれ。同志社大学ミステリ研究会出身。2015年「監獄舎の殺人」でミステリーズ!新人賞を最年少で受賞。18年に受賞作を収録した『刀と傘 明治京洛推理帖』でデビューし、19年に同作で本格ミステリ大賞を受賞。幕末、維新、戦前といった時代小説と本格ミステリを巧みに融合した作風で評価されている。21年『幻月と探偵』で大藪春彦賞候補。他の著書に『雨と短銃』『京都陰陽寮謎解き滅妖帖』など。

 

■「雌雄七色」斜線堂有紀

 主人公である息子は、死んだ母親が父親に宛てた手紙を見つけた。それは全部で7通ある、いわゆる「虹の手紙」だ。息子は、母親の死の原因は父親にあると考えており、今なお憎んでいる。しかし、手に取った「紫の手紙」から母親の父親への愛情を感じ、母親の気持ちを知ってもらうべく、父親へ7通全てを送ることにした。母親は生前に何を記したのか、父親へはどんな気持ちがあったのか、死の真相とは──。読者のみなさん、それではこれから、7通全てをお読みください。驚天動地の書簡ミステリー。

 

斜線堂有紀(しゃせんどう・ゆうき)
上智大学卒。2016年『キネマ探偵カレイドミステリー』で電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞してデビュー。漫画原作やボイスドラマの脚本など幅広く活躍。20年『楽園とは探偵の不在なり』がミステリ・ランキング上位に連なり、21年の本格ミステリ大賞候補となる。近著に『死体埋め部の回想と再興』『ゴールデンタイムの消費期限』『廃遊園地の殺人』『愛じゃないならこれは何』『君の地球が平らになりますように』『回樹』など。

 

■「人喰館の殺人」白井智之

 寸断された道路と熊の襲来という、2つの原因により閉ざされた〈人喰館〉。脱出を試みた1人が熊に惨殺され、残りの7人は恐怖から館から出ることができない。救助が来るまであと3日。その中で起こる密室殺人。誰が何のために……。そして、食料の尽きた館で、残された人々は一体どのように生きのびたのか──。

 

白井智之(しらい・ともゆき)
1990年生まれ。東北大学法学部卒。2014年、横溝正史ミステリ大賞の最終候補作『人間の顔は食べづらい』でデビュー。16年『東京結合人間』で日本推理作家協会賞候補、17年『おやすみ人面瘡』で本格ミステリ大賞候補となる。22年『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』で本格ミステリ・ランキング第1位を獲得。他の著書に『そして誰も死ななかった』『名探偵のはらわた』『ミステリー・オーバードーズ』『死体の汁を啜れ』などがある。