■「しんどい時」に駆け込んで、生きるのが楽に!!

 

 不倫の恋、毒母、パートナーのDV、育児ストレス、愛する人との永遠の別れ――そんな、仏様でも止められないモヤモヤや苦しみをすっきり晴らしてくれる尼僧が姫路にいる。創建300余年の駆け込み寺・不徹寺で「庵主あんじゅさん」と親しまれる第25代住職・松山照紀さん(60)だ。

「生きるのがしんどい」「もう死にたいんです」。切々と訴える女性たちの声にひたすら耳を傾け、1年365日、無料の電話相談にも乗る。そして、2匹の寺猫・織部と白ちゃんとともに、太陽のような笑顔でこう励ますのだ。「だいじょうぶ! 人生、何度でもやり直せますよ」と。

 今や10代から80代の女性まで「お話しするだけで、身も心も楽になる」と絶大な信頼を得ている庵主さん。だが、12月22日に出版した初著書『駆け込み寺の庵主さん~心のモヤモヤ「供養」します』(双葉社)で明かされた半生は、穏やかな佇まいとは正反対の壮絶なものだ。

 福岡の農家に生まれ、不器用な性格ゆえに孤独だった少女時代。20歳で予期せぬ妊娠の末に学生結婚するも、夫からの理不尽な三下り半でシングルマザーに。祖母の介護や自身の大病に苦しみつつ、ナースとして自立。多くの看取りに立ち合うなかで座禅と出会い、48歳にして出家……。
 
「ホント、いろんなことがありました。泣いて笑ってスッ転んで、立ち上がってはまた転んで。でも、生きてりゃなんとかなるもんです」(庵主さん)

 凄まじい苦労を重ねたにもかかわらず、この明るさ、この軽やかさ。どうやら秘訣は、「心にゴミを溜め込まないこと」にあるようだ。

 著書では不安、嫉妬、憎しみ、怒りなどなど、長年居座るやっかいな心の粗大ゴミの手放し方を丁寧に指南。「たった22文字でハナマルな私になるパワーワード」や「幸せホルモンが湧いてくる呼吸法」など奥深い提言は、どれも手軽に試せるうえ、確実に気分が上向いてくる。

 豊富な人生経験と禅の教えに裏打ちされた「庵主さん節」は、恋愛のお悩みでも炸裂。「好きな人の気持ちなんて考える必要なし」と言い切る、その驚きの理由とは? さらに、「結婚を決める際に必要な、たった2つのこと」とは? 本質を突く痛快なアドバイスの数々を、ぜひ本書で確認してほしい。きっと「なるほど!」と膝を打つことだろう。

 パートナーや大切な存在を亡くした人たちにも、庵主さんは優しく語りかける。「心にぽっかり空いた穴は、本気で愛した証」「お金や特別な言葉ではなく“時間”を捧げることこそが尊い」などジーンと沁み入る金言は、いつか来る「その時」のためにもぜひ知っておきたいものばかりだ。

 壮絶な“女のけもの道”をひた走ってきた庵主さんだからこそ、言えることがある。伝えられることがある。あっけらかんと明るい語り口に引き込まれ、クスリとさせられたり、ホロリとさせられたり。やがて読み進めるほどに、胸がぽかぽかとあたたかく、すっきりすること間違いなし。これぞまさしく「読む駆け込み寺」。門はいつでも、開いている。