■家康の新たな魅力を掘り起こした「三河雑兵心得」
2023年1月から始まるNHK大河ドラマ『どうする家康』。過去に2回も大河の主人公となった誰もが知る偉人をどう描くのか興味は尽きないが、今回は個性豊かな徳川家臣団にも光が当たるようだ。
その家臣団の中でも異色なのが「三河雑兵心得」シリーズの主人公・茂兵衛だ。三河国渥美の百姓だったが、やむを得ない事情で人を殺め、村を出奔。家康の家来である夏目次郎左衛門(夏目漱石の祖先!)の郎党となり、三河一向一揆を経て家康の足軽となるというところまでが第1巻『足軽仁義』のあらすじだ。その後、幾多の戦場で汗だく血だらけ泥まみれになりながらも、しぶとく生き残り、少しずつ出世していく。最新第10巻『馬廻役仁義』では、家康の馬廻として秀吉との会談に臨む。
戦国時代が舞台なのに、主人公を英雄や豪傑ではなく、軍隊では最下層の足軽に据えたところが新鮮、かつリアルと評判を呼んでいる。実際に作品の中で、甲冑のつけ方や戦支度、行軍の様子、槍での戦い方、鉄砲の撃ち方が詳しく語られ、合戦の様子や戦法の解説が丁寧に描かれるので、あまり歴史に詳しくない読者でもイメージしやすく、次から次に読み進められると好評だ。
もちろん主人公である茂兵衛の魅力も忘れてはいけない。文芸評論家の細谷正充さんは、そんな茂兵衛について「乱暴者だがお人好し。槍に優れ、敵を殺して出世していく。だが一方で、相手の事情や年齢を知って、敵を見逃すこともある。また、首を獲ることが苦手で、しばしば首級を放棄するのだ。どんなに出世しても武士の美学を持たず、人間臭い感情を露わにする茂兵衛は、それゆえに格好いいのである。」と語る。
希代の英雄にして、食えない狸親父・家康の新たな魅力を掘り起こした「三河雑兵心得」が、今なら“読み始め3巻セット”として、1~3巻をセット定価1,100円で発売中だ。
『どうする家康』では様々な局面で決断を迫られる家康の姿が描かれることだろう。その時、傍らに無骨な足軽が控えているのを想像すると、より楽しめるかもしれない。大河ドラマの前に読まなくて、どうする?
・三河雑兵心得シリーズ特設サイト
https://fr.futabasha.co.jp/special/mikawa/