■『天国からの宅配便』柊サナカ

 

 人生は出会いと別れの連続である。しかし、成長するにつれ鈍感に、いや慣れてしまうこともあるだろう。それでも誰もが向き合わなくてはならない別れがある。それは死という永遠の別れだ。

 柊サナカの新作『天国からの宅配便』には後悔の残る別れを経験した人物が登場する。そこに現れるのが「天国宅配便」というサービスの配達人である七星律ななほしりつだ。

「天国宅配便」という響きにファンタジーな印象を持つかもしれないが、実際に存在してもおかしくないとも思うほどのサービスだ。依頼人が生前に宅配物を預け、死後にそれを届けるというもので、それはさながら天国からのメッセージ。その届け物の発送が、なぜ死後でなければならなかったのか。そこに込められた想いに気が付いた時、本当のメッセージが分かる。

 友人に先立たれ、今は孤独にゴミ屋敷に暮らす老女。田舎から東京に脱出したいと訴え、祖母と喧嘩別れした女子高生。幼馴染と結ばれなかったことをいまだに引きずっている中年男性。顧問教師を喪った、卒業以来、部活仲間と疎遠になっている女子大生。様々な事情を抱える登場人物たちが、「天国宅配便」の七星律と出会って、喪った人の最後の贈り物を受け取って、何を思うのか。生前には伝えられなかった大事なことに気付いた時、彼らは救われる──。

 制服のマークは、純白の羽根。七星とか言っていたあの子は、今日は、誰の、どんな最後の贈り物を配達に行っているのだろう。今日もショートカットに帽子をかぶって、誰かの家の呼び鈴を押しているのだろうか。
 きっとそうだ。
 今日を生きる、誰かのために。


 七星律が届ける天国からの贈り物は、きっと生きる者のために──あなたのために必要なものなのだ。

 近しい人の死というテーマは、誰もが直面する問題であり、読むと自分に置き換えてしまう部分も多い。「伝える」ことがいかに大事かを、心揺さぶるエピソードや意外なストーリーとともに教えてくれる注目の一冊だ。