驚愕のラストに反響続々! 運命を分ける一夜の事件を描いた、ノンストップ・ミステリ『この夜が明ければ』。発売を記念して、著者の岩井圭也氏からのメッセージを紹介する。
『文身』『水よ踊れ』など、人間や社会の暗部を描き出し、熱のこもった文体で読み手を魅了する岩井圭也氏。10月21日に発売した新刊『この夜が明ければ』は、北海道の漁港を舞台にしたクローズドサークルだ。正義感の強い青年・工藤は、水産加工の季節アルバイトに集まった6人の男女と宿舎で共同生活を送っている。ある晩、アルバイトの1人の男が不審死したことで事態は奇妙な方向へ。通報しようとする工藤に対し、他のアルバイト達は「警察は呼ばないで」と主張し、死んだ男の鞄から脅迫状らしきものが見つかっても、まともにとりあおうとしない。しびれを切らした工藤は、宿舎内で犯人捜しを始めるが――。
それぞれのアルバイト達がひた隠しにしている「秘密」とは何なのか。社会の歪みを凝縮したような闇と、救いを求めてあがく彼らの希望が交錯し、ラストには切ないほどの感動が待っている。一夜にして世界が反転する、怒濤のノンストップ・ミステリ。発売を記念して、著者の岩井圭也さんからメッセージを公開する。
【著者からのメッセージ】
執筆のきっかけは、夏の間、北海道の漁港で泊まり込みのアルバイトに従事する人々を知ったことでした。見知らぬ間柄だった男女が数か月間、泊まり込みで来る日も来る日も魚をさばく。一緒に飯を食い、酒を飲み、時にはバイクを駆り、釣竿を持ち、思い思いの時間を過ごす彼ら彼女らは自由を謳歌しているように見えました。ただ、そのきらめきは長くは続きません。夏が終わればアルバイトも終わり、集まっていた男女は日本全土へ散り散りになります。たった数か月。でもそこにいる人たちにとっては、かけがえのない時間のはずです。いつか、そんな輝かしいひと時を書いてみたい。ずっとそう思っていました。
しかしいざ書きはじめてみて、私が本当に書きたいのはきらめくような瞬間ではなく、その裏にある一人ひとりの過去だと気づきました。行き場を失った人々が集まった時、そこで一体何が起こるのか。たった数か月で解消されるはずだった関係は、どう転がっていくのか。私はずっと、輝かしい夏の日差しではなく、その光が生み出す影の部分にまなざしを向けていたのかもしれません。
ぜひ、七人の男女が抱える、色濃い光と影を目撃してください。
岩井圭也
岩井圭也(いわい けいや)
1987年生まれ、大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞し、デビュー。他の著書に『夏の陰』『文身』『水よ踊れ』などがある。
公式HP https://keiyaiwai.wixsite.com/info
Twitterアカウント @keiya_iwai