俺が稲荷神となって、はや三百年。偉大なる大神様から、「誉人(ほまれびと)」として選ばれた人間の願いを叶えよと言い渡され、今日も神社で人々の願いに耳を傾けている。俺は人智を超えた神の力を使えるが、人間の心の機微がさっぱりわからない。今回やってきた誉人の女は、病におかされ余命わずかにもかかわらず、「どうか私が殺されますように」と願った。遠からず命が失われるのに、一体何のために、誰に殺されたいのか? 俺は彼女の願いを叶えることはできるのか―?

神様の少年が解き明かす、人間の不思議と宿命。読後、温かな幸福感に包まれるハートフルな神様ミステリー!