主人公は直原高校に勤務する〈なんちゃって司書〉の高良詩織。最初は手探りだった仕事も二年目に入り、やりがいも感じてきた。きちんと資格をとるべく大学の通信課程で司書の勉強も続けているところだ。

 本書はそんな詩織が出会う、本にまつわる謎や事件、本を通して広がる人間模様などを描いたハートフル・ブックストーリーの第三弾である。

 本シリーズの面白さは、読書から生まれるさまざまなつながりを描いていること。第一作『図書室のキリギリス』では読書会などのイベントを通して未知の本に出会う楽しさを描き、第二作『図書室のピーナッツ』では図書館のレファレンスを通して知の道筋を辿る奥深さを描いてきた。

 そして本書のテーマは「共有と組み立て」だ。

 夏休みに親に黙って旅に出た生徒の行き先を、彼が借りた本から推理する第一話。図書室でビブリオバトルをやりたいと生徒たちが盛り上がる第二話。そして、誰でも自由に書き込める図書室のノートが原因で起きたケンカから、リテラシーとは何かを考える第三話。

 こうしてみるとバラバラの話のようだが、どれも複数の本や複数の考えを照らし合わせて結論に到達する様子が描かれている。スタインベックとジブリの本から見えてくるものは何か。自分が読んだ本を他者に伝えるとはどういうことか。一冊の本で知ったことを、それがすべてだと思い込んではいないか。情報を共有し、感想を共有し、そこから考えを組み立てていく、その過程の面白さと大切さがこの第三作には満ちている。

 読書はもともとひとりで楽しむ趣味だ。けれど読むときはひとりでも、情報と感想を共有することで、得るものは何倍にも広がる。本を通して人を知り、人を通して本を知るという豊穣な世界が、本書には詰まっているのだ。本シリーズには多くの実在の本が登場するが、知っている本が出てくると嬉しくなり、それがどう語られるかを読むのも楽しい。共有の面白さを実体験できると言っていい。

 また、第三話で語られるリテラシーの問題は実に興味をそそられた。高校の英語教師、国語教師、化学教師がそれぞれの専門分野を生かして「情報を正しく判断する」ことを生徒に教えるのだ。シュリーマンや太宰治をこんなふうに使うとは! ネットやSNSの情報を鵜呑みにしたり、自分の考えと違うものは「間違い」と決めつけたりしがちな人に、ぜひお読みいただきたい。