斉木香津の「超能力者には向かない職業」シリーズ第二弾が刊行された。第一弾の『沼に沈む骨は愛を語らない』が、書き下ろしで刊行されたのが、今年の一月のこと。半年も経たないうちに新作が読めるとは、嬉しいことである。

 主人公の高畠麦子は、神奈川県警の刑事だ。人の心が読めるという超能力を持っていたが、子供の頃に失っていた。ところがある事件で能力が復活するも、それにより重傷を負った。静養のために赴いた田舎の村で、彼女は新たな事件と、自分と似た超能力を持つ少女と遭遇する。

 というのが、シリーズ第一弾の粗筋だ。本書で麦子は、刑事課から警務課警務係に異動。現場から離れた。しかし、いつも通りかかるマンションから「どうしてヨッチャンはマリコサンを殺してしまったんだろう」という声を脳内で聞く。またもや超能力が発動したのだ。気になってマンションに行った麦子は、子供時代の彼女を知る篠原遥と出会う。遥も超能力者だった。さらに彼は、マンションの持ち主で、ファッションブランド「ヨランド・アイリ」のデサイナー兼オーナーだった篠原藍梨の孫である。遥の紹介で、マンションの住人を訪ねる麦子。住人はすべて、藍梨の知り合いや関係者だった。しかし声の件については、何も分からない。

 その後、マンションの近くで、スーツケースに入れられた老女の死体が発見される。スーツケースには、マリコという名が刻まれていた。彼女の超能力のことを理解している元上司から、独自の捜査を勧められた麦子は、マンションの住人に話を聞くのだった。

 麦子の超能力は、いつ発動するか分からず、制御不能である。また、復活してから、徐々に進化している。その力に振り回されながら、閉ざされたコミュニティ(前作は田舎の村、本作はマンション)で起きた事件に挑むというのが、今のところのシリーズのフォーマットだ。刑事が主人公だが、警察小説ではなく、独自の超能力ミステリーになっているところが、読みどころだろう。

 もちろんミステリーとしても、注目ポイントは多い。犯人が判明してから、どんどん意外性を重ねていく展開が素晴らしかった。さらに、マンションの住人を通じて描かれる、自分の人生を全力で生きた者たちの行き着く場所についても考えさせられた。だからこそ麦子が、超能力とどう向き合って生きていくのか、興味は尽きない。シリーズ第三弾が、楽しみでならないのだ。